エアコン「28度で涼しい人」と暑い人の差 知っているのと知らないのとでは大違い!
ぐんぐん気温が上昇するこの時期は、体調を崩す人が増え始めるころ。夏に向けて湿度も高くなることから、熱中症で搬送される人も多くなっている。これから本格的に始まる夏に備え、体調管理には十分気を付けたい。
そんな厳しい日本の夏を乗り切るのに、もはや欠かせなくなったのが「エアコン」だ。夏は暑いのが当たり前と、我慢してしまう人も多いが、熱中症予防のためにも適宜使うことをお勧めしたい。
ところで、みなさんは冷房を何度に設定して使っているだろうか。地球温暖化対策の一環として環境省が2005年から提唱する「クールビズ」では、冷房時の室温は「28度」が目安とされている。
また11年の東日本大震災後は、日本全国で電力節約が叫ばれるようになった影響で、オフィスでも家庭でもエアコン「28度設定」が推奨されるようになった。
しかし、「28度では暑くて不快」と感じている人が実際多いのではないだろうか。そこで「28度設定では本当に快適に過ごせないのか」という疑問を明らかにするべく、横浜国立大学の田中英登教授による実験が行われた。
最新設備で、暑さと湿度の関係が解明!
温熱環境をテーマに、人が過ごしやすい環境づくりを長年研究してきた田中教授のパートナーとなったのは、空調専門メーカーのダイキン工業だ。
最先端の設備が整うダイキン工業の研究施設「テクノロジー・イノベーションセンター(以下TIC)」で、「湿度調節による快適性」実験が実施された。設定温度を変えずに快適に過ごすには、湿度がカギとなると考えたからである。
今回は、20代、30~40代、60代の男女各2名ずつ、合計12名を対象として実施。TICにある温度や湿度、気流などを詳細に設定することができる人工気候室を使って、温度を28度に保ち、湿度を85%・60%・50%と設定を変えて変化をみた。被験者には、定期的に軽い体操を行ってもらうなど日常生活に近い状態を作ってもらい、主観的温度感覚、温熱的快適感覚などを確認、さらにサーモグラフィーで体表温度を測り、発汗量なども測定した。
すると、興味深い結果が出た。温度を28度に、湿度を85%に設定すると大半の人が「不快」と感じたのに対し、同じ28度設定でも湿度を60%に下げると、12人中10人が「快適」と答えたのである。
実際に、湿度85%環境では体の表面温度も高く36度程度まで上がり、発汗も多かったが、湿度60%では発汗量も収まった。温度の変化が顕著に出やすいとされる顔や手の表面温度も、通常に近い33度程度まで下がった。湿度を下げることで快適に感じられ、また実際に体の表面温度も低下することが明確に示されたのだ。
確かに、気温が高くても湿度が低ければ涼しく感じる、となんとなくわかっている人は多いだろう。だが、ここまで快適さが異なるとは、この実験結果をみて驚いたのではないか。
湿度10%アップで、気温2度上昇と同じ不快感!
田中教授も「たとえエアコンをつけていても、室内で熱中症になる人もたくさんいます。特に注意して湿度管理をしていなければ、室内の湿度が80%以上になってしまうこともあります」と湿度管理の重要性を説く。
高齢者ばかりではなく、子どもから若い世代までが室内で熱中症にかかり病院に搬送されている中で、「自分だけは大丈夫と考える」のは非常に危険な考えだ。
「湿度が高い環境では、ただ気温が高いだけの状態よりも、さらに体に負荷がかかります。感覚としては、同じ気温でも、湿度が10%上がると温度が2度上がったのと同じように感じます。たとえば、同じ28度の環境にあっても湿度が80%の部屋は、湿度60%の部屋よりも4度ほど暑く感じるという研究もあります」(田中教授)
また、同じ環境であっても、人によって汗のかきやすさは異なる。汗をかきにくい人は、本人が感じている以上に熱が体内にこもってしまい、熱中症になりやすく危険なのだという。
今回の実験により、28度環境下でも、湿度を60%以下に低下させることによって暑さや不快感を減らせること、実際に発汗量も減少することが証明された。
エアコン28度設定は経済面・環境面ともにエコであることは明白だが、加えて「湿度」をコントロールすることで、体に優しく快適な過ごし方ができるのだ。「今回の実験では、男性・
日本ならではの高温多湿な夏を快適に乗り切るには、エアコンの活用が欠かせない。一般的な冷房運転は、設定温度まで室温が下がると運転が弱まり、湿度も高くなりがちだ。しかし最近では、設定温度に達しても湿度を調整できる高機能エアコンなども登場している。この機会に見に行ってみるのも良さそうだ。