日米首脳会談は「対北朝鮮」「通商」とも不透明 トランプ大統領はどんな取引を提示するのか

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政府・与党内にも「トランプ大統領が今、安倍首相と会うメリットは多くない。会えるだけでもラッキーでないか」(与党関係者)との声もある。

また、安倍政権にとって死活的なテーマである拉致問題も、米国民の関心は高いとは言えず、トランプ大統領にとってどの程度の重要性を持つのかわかりにくい。

トランプ大統領は、米朝対話について「長い道のりだったが、世界にとっては良いことだ」(3月7日)とコメントしており、政府・与党内では米朝首脳会談で米国が拉致問題を提起しないリスクを警戒すべきという見方もある。

読めないトランプ大統領の通商カード

2つ目の通商・経済問題でも、トランプ大統領がどのような「取引」を提示してくるのか、読めないとの声が日本政府関係者から漏れる。

政府内では、日米首脳会談の開催決定を受け、すでに2度にわたり外務省、経済産業省など関係省庁による、閣僚と幹部が参加した対策会議を開催。米国側の戦術を含めた情勢を巡り、意見交換を行った。ただ、現時点で明確な方向性は打ち出せていないもようだ。

例えば、米国が先月発動した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置で、日本も欧州連合(EU)や韓国などと同様に「適用除外とするよう働きかけたい」(与党)との意見がある。

しかし、その「代償」として2国間による自由貿易協定(FTA)の締結を首脳会談で持ち出されると「かえって失うものが大きい」(政府関係者)との声もある。

元財務官の篠原尚之・東京大学教授は、ロイターの取材に対し「日本としては『貿易は多国間の枠組みでやるべき』と言い続けるのだろうが、米国は乗らないだろう。いずれは米国のFTA交渉の要求を受け入れざるを得ないのではないか」との見通しを示した。

安倍首相が、この問題でどのような意思を示すのかは「高度に政治的な判断で決まる」(経済官庁幹部)とみられている。

また、現状での可能性は低いものの、将来的に日銀の金融緩和がやり玉に挙げられるリスクも、一部政府・与党関係者の間でささやかれ始めている。

米連邦準備理事会(FRB)が連続利上げに動き、欧州中央銀行(ECB)も緩和縮小を模索する中で、長期金利をゼロ%に固定する現状の日銀の金融政策が、局面によっては「円安誘導策とみられかねない」(与党関係者)ためだ。

渡辺博史元財務官(国際通貨研究所理事長)は、ロイターとのインタビューで「日本の成長率が0.3%程度なら仕方ないが、1.3ないし1.4%なのに、(長期金利の誘導目標が)ゼロ金利で維持というのは(金融政策の世界的な枠組みである)物価目標政策(インフレターゲット)という話(本来の趣旨)と違う、とアメリカが言ってくる可能性がある」と懸念している。

(竹本能文 取材協力:木原麗花 編集:田巻一彦)

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