5年間で約1800万円も値上がりした街は? 1都3県の売買タイミングや穴場も「見える化」
住宅市場にちょっとした異変が起きている。2016年に首都圏で販売された民間の分譲マンション市場で、中古マンションの販売戸数が新築マンションのそれを上回った。つまり新築と中古マンションのシェアが逆転したのだ。新築と中古の逆転現象は、マンションの大量供給が始まった1990年代以降で初めてのことだという。
欧米の住宅市場では、国によって多少の差はあるが、中古物件の流通シェアが新築を大きく上回っている。米国では流通市場のおよそ8割が中古物件だ。それに対して日本では、新築のほうが圧倒的に多かった。その割合は米国とちょうど真逆で新築の流通シェアが8割ほどに達している。日本では長年にわたり「新築信仰」が幅を利かせていたが、首都圏に限ってなぜ逆転したのだろうか?
今、首都圏や関西圏では2020年に向けて大規模な開発が盛んに行われている。そのため都心部では地価が異常な上昇傾向にある。特に東京の都心部ではまとまった大きさの土地が少ないこともあり、全体的に土地の需要が強含んでいる。国土交通省などの調査では全国の住宅地価は依然として下げ止まっていないが、都市部の利用価値の高い土地は地価が相当な勢いで上がっているのだ。しかも地価に加えて人件費、建築資材もそろってのトリプル高の状況で、新築マンションの価格は確実に上昇している。直近では、たとえば東京都杉並区のJR荻窪駅から徒歩14分というロケーションで、新築マンションの分譲価格が坪単価350~400万円という例もある。20坪(約66m2)で7,000万円以上になる計算だ。
新築マンションは過去最高の価格になり、こうなると一般のビジネスパーソンにはもう手が出しにくい水準といえる。そのため最近は、新築ではなく中古マンションに目を向ける人が増えているようだ。特に20~40代の若い層では、中古マンションを買って、自分たちの好きなようにリフォームするというスタイルが人気を集めている。
中古マンションの価格を可視化で「何」が変わるのか?
そもそもなぜ日本では欧米と違い、中古物件の流通シェアが低かったのだろうか?不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULLの新UX開発部ストック開発ユニット・花多山和志ユニット長はこう言う。
「高度成長期にスクラップ&ビルドの文化が根付き、新築にこだわる人が多くなったことや、税法上の建物価値評価の考え方などいくつかの要素が考えられますが、根底にあるのは不動産情報の透明性が低いことでしょう。新築物件なら、チラシなどで間取りや価格帯を知ることができ、物件によっては価格表をもらうこともできますが、中古物件の場合、過去の不動産取引の情報は不動産事業者しか見ることができません。そうした情報が不透明だと、販売価格が妥当なのかどうかということも一般の人には判断がつきにくくなってしまい、中古物件は手を出しにくいと感じる人が多くなったのでしょう」
そこで花多山氏はこうした思いから情報を可視化するサービスの開発に取り組むことにした。そして2年前「プライスマップ」というサービスを開始した。これは地図上に表示された物件をクリックするだけで、参考価格が表示されるサービス。参考価格は「LIFULL HOME'S」に掲載された中古物件の募集情報データをベースに、立地要素、時間要素(掲載期間、相場変化など)、物件属性要素(築年数、面積、階数など)から算出したものだ。サービスの特徴としては、こうしたデータを基に中古マンションの適正価格をAIで自動査定しているというところにあり、現在売り出し・賃貸募集している物件だけでなく、市場に出ていない物件の価格も
「プライスマップ」により中古マンション価格の可視化にある程
「プライスマップ」とともにこのサービスでも価格の算定ロジックなどを監修した日本大学教授の清水千弘氏が言う。
「一般の商品はどこで買っても、同じ商品なら品質や内容量などは同じです。しかし不動産の場合、同じ商品というものがありません。同じマンションの住戸でも、階高や間取り、向き、使われ方などがすべて異なりますから、価格を算出するロジックをつくるのはとても難しい作業です。ただ、LIFULLは日本最大のサイトを運営していますからデータも豊富で、それだけ精度も高くなります。広告に表示されている価格は、販売会社があえて安くしている可能性もありますから、そうしたデータは使わないようにしていますし、内部で審査もしていますから、非常に良質な情報が提供できていると確信しています」
直近5年間の駅周辺価格の推移が一目でわかる
今年の1月からは「見える!不動産価値」にさらに物件の最寄り駅の中古マンションの価格帯と直近5年間の駅周辺価格の推移が一目でわかる情報の提供も始めた。
このサービスを利用すると、たとえばJRの「さいたま新都心駅」のエリアは価格が上がっているとか、意外な駅に需要があることもわかったりする。価格優先で穴場を探すという使い方もできそうだ。
下記は「見える!不動産価値」の実際の画面と、1都3県の主要駅が5年間にどのような変動をしたかピックアッ
千葉は、東京や神奈川の物件価格高騰に対して安価に見えるため、もともと人気のある新浦安駅や市川駅以外でも需要が伸びてきている。北国分駅はまさにその傾向が強く現れ、もともとの価格相場が低かったために変動率が高くなったようだ。
※この変動額・変動率は、基準となる物件を60m2/駅徒歩10分/10階建の5階部分/SRCと定義し、2012年時点で築10年の物件が2017年に築15年となった際の差分を推計したもの。
こうした変動額は実際どのように参考にすればいいのだろうか?
「住まいを探すときは多くの方がまず、住みたいエリア、駅を決めます。このサービスを利用すれば、住みたいと思っている駅周辺の価格
「首都圏も関西圏も、沿線開発とともに住宅が開発されてきました。ですから都市圏では、駅と地価の相関関係が重要なファクターで、こういう情報は住まいを買いたい人にも売りたい人にも大いに役立つものです。『見える!不動産価値』を上手に利用すれば、買いたい側と売りたい側のミスマッチも減らせるでしょうから、中古マンションの流通市場の透明化が増すとともにさらに活性化することも期待できます」(清水氏)
多くの人にとって住宅の購入は人生で一番大きな買い物。だからこそ正しい情報を基に判断したいもの。もちろん最後は自分の目で実際の物件を見て判断するのがベストだ。しかし、時間がない人や現状特に売買予定がない人でも、自分の住んでいるエリアについてどんな変動が起きているかうわさではなく「見える!不動産価値」などロジックがしっかりしている信頼できる情報を参考にしてみてはいかがだろうか。