できる人はデータ分析の本質を知っている 「整理」するだけと「分析」するのは大違い

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その代わりに、「自分は何を知るべきなのか」「そのためにはどんなデータをどのように見るべきなのか」といった分析者側の思考、つまり仮説が分析作業の前にあって、それをデータで検証することでゴールにたどり着くことができるのです。

このように、ビジネスでデータを活用できていない理由の多くが、分析方法ではなく、見るべきデータが適切でなかったり、分析範囲が十分でなかったりすることにある訳です。

まず分析作業をするために手をパソコンのキーボードに触れることを意識的に止めて、「いったい自分は何が分かると良いのか」「それによってどのような効果、行動につながるのか」「そのためには何をどのように見ればよいのか」をできるだけ明確にする。それだけでもガラッとアウトプットの質が変わるはずです。

結論(ストーリー)を見つける「データ分析」

データ整理でできることは現状や結果の把握だけです。

会社でよく目にする、店舗毎の売り上げの違いを示したグラフも、「次に何をすればいいか」などの課題点までは見つかりません。

あえて見つけるにしても、「いちばん売り上げの低い店舗Cのテコ入れが必要」といったことしかわかりません。これでは「”テコ入れ”とは一体何をすることなのか」、「本当にテコ入れをすることで店舗Cの業績が回復するのか」といった、一番知りたい情報が得られないのです。

ここを卒業するためには、目的や課題の具体的な定義と仮説が必要と紹介しました。更に、データ活用のレベルを上げ、現状把握だけに終わらないためのテクニックとして「2種類以上のデータ」に着目する必要があります。これができて初めて「データ分析」の域に達します。

単純な売り上げのグラフに「売り場面積」の軸を加えてみます。

1軸のグラフでは売り上げの低い店舗Cに問題があるかのように思われましたが、グラフを2軸にすると「売り場面積に対して、売り上げにつながらない店舗A」に問題があることがわかりました。

更にこの問題を掘り下げる際に、「なぜ店舗Aだけが面積に対して売り上げが伸びていないのか」という点に、よりフォーカスして要因検討ができるようになりました。

「データ整理」と「データ分析」の違い

「データ整理」と「データ分析」の違いをまとめると以下のようになります。

【得られる結果】
データ整理は「現状把握」
データ分析は「ストーリー(要因や背景、改善ポイント)の発見」

【扱うデータの視点】
データ整理は「1種類」
データ分析は「2種類以上」

「整理された」データなのか、「分析された」データなのか。ビジネスでデータを扱う際に「課題を発見するつもりがデータ整理しかしていなかった」「データで現状把握しただけで、要因と方策はそこから自分の解釈で(主観で)ひねり出しただけ」と思い当たる人も少なくないかもしれません。

柏木氏が講師を務める東洋経済の研修講座はこちらから。

柏木 吉基
データ&ストーリーLLC代表
横浜国立大学非常勤講師 多摩大学大学院客員教授
プロフィール
慶応義塾大学理工学部卒業後、日立製作所入社。在職中に欧米両方のビジネススクールにて学びMBAを取得。Academic Award受賞。2004年日産自動車へ転職。海外マーケティング&セールス部門、ビジネス改革グループマネージャ等を歴任。グローバル組織の中で、数々の経営課題の解決、ビジネス改革プロジェクトのパイロットを務める。2014年独立後は、豊富な実務経験と実績に基づいたプログラムで、数多くの企業・自治体のスキル育成、パフォーマンス改善に貢献。誰もが日常業務で自律的に考え、成果を出すための思考法、分析力を分かり易く伝えた著書や講義には高い定評がある。
主な著書
『「それ、根拠あるの?」と言わせないデータ・統計分析ができる本 』(日本実業出版社)。『日産で学んだ 世界で活躍するためのデータ分析の教科書』(日経BP社)。『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らないできる人のデータ・統計術』(ソフトバンククリエイティブ社)