性暴力加害者の「歪んだ認知」は変えられるか 再犯防止はいかになされるべきか
「全体の再犯率より低いですが、ゼロではありません。一生を通じて再犯しないことが目標です」(監察課)
東京保護観察所は法務省の建物内にある。性犯罪者処遇プログラムの受講は、刑務所から仮釈放になった人、保護観察付き執行猶予中の者などが対象。各回のプログラムは3〜4人のグループで行われる。プログラムを実施する保護観察官は、男性と女性の2人だ。
「1回目は個別面接をします。事件前後のことを細かく聞くことで、性犯罪に至るパターンがあり、単に性欲が抑えられずに衝動的に突然に事件を起こしたのではなく、事件に至るまでに段階があることに気づきます。それから4回はグループで、そのパターンに至らないようにするため、段階ごとの対処方法を考えていきます」(担当者、以下同)
性欲自体が悪いわけではなく、日常のストレスを性的なことで発散することが事件につながる。どのような認知や行動が犯罪につながっていたかを受講者自身に考えさせ、変えることで事件を防いでいく。
「例えば、“強引に誘えば女性は受け入れる”という認知で事件を起こした人がいたとします。そうした人は、“強引に誘うと女性は嫌がる”と真逆の認知をすぐに受け入れることは難しい。それは本当なのか問いかけたり、“受け入れる女性もいるかもしれないが、すべての女性が嫌がらないわけではない”と別の可能性を何度も考えさせたり、本人が受け入れられる範囲を探っていき、望ましい対処方法につなげていきます」
保護観察では、仕事を探して生活を安定させていく指導をしたり、地域のボランティア活動(社会貢献活動)に参加させたりすることで犯罪を繰り返さなくなった人もいる。
「ボランティアを通じて人間関係の輪が広がり、行動が変わりました。保護観察所はきっかけを作ったかもしれませんが、自ら活動に参加して世界を広げたのはその人自身です」
刑期を終えても、プログラムを継続することが重要
保護観察所のプログラムは短い。受講後も効果を維持させるのが課題だ。出所後、自身の行動を見つめていくかも問われる。
「都内某所の更生保護施設には性犯罪の加害者も入所しています。そこで専門のプログラムを行っていますが、なかなか医療機関にはつながりません」
そう話すのは、大森榎本クリニックで精神保健福祉士・社会福祉士を務める斉藤章佳さんだ。