11月も残り2日。12月に入ると一気に年末モードだ。企業にとって12月は従業員への冬のボーナス(賞与、一時金)の支給のほか、取引先への支払いなどがかさむ時期。無事に年が越せるかとヒヤヒヤしている企業経営者や財務・経理担当者もいるだろう。
一般家庭もそうだが企業もカネがなければ極端な話は破綻してしまう。そんな企業の財務健全性を示すのがネットキャッシュだ。現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債と前受金を差し引いて算出する。企業の実質的な手元資金であり、これが多いほど財務的な安全性が高い。
東洋経済オンラインは約3600社に及ぶ上場企業のネットキャッシュを割り出し、上位500社をランキングにした。例年同時期に同じ内容のランキングを公表しており、その最新版となる。それぞれの企業の直近本決算をベースにしている。
任天堂のネットキャッシュは9460億円
1位は任天堂の9460億円。今回で4回目となる本ランキングで初めてトップに立った。2012年3月期や2014年3月期は数百億円レベルの赤字を出したが、今年は新型の家庭用据え置き型ゲーム機「Nintendo Switch」が大ヒット。当面は安定した高水準の利益が見込まれ、今後はさらにキャッシュを積み上げることが予想される。
2位は信越化学工業の9249億円。塩化ビニル樹脂、半導体シリコンウエハで世界首位、ケイ素樹脂、フォトレジストなどの材料も手掛ける化学メーカーだ。ここ数年は主力事業が毎年1000億円以上の純利益を出すなど、手元資金が潤沢になってきている。
3位はSUBARU(旧・富士重工業)の8311億円。「スバル」の車名ブランドで展開する自動車メーカーだ。特筆されるのは米国での大躍進。水平対向エンジンと4輪駆動というスバルの特徴は、雪道のような悪路走行でも高い安定性を発揮。現地での旺盛な需要をつかまえ、増産しても追いつかないほどの好調な販売が、手元資金を積み上げる要因になっているようだ。
4位にはソニー、5位ファナック、6位キーエンス、7位京セラなど業績も堅調で国際的に見ても優良な企業が続く。
覚えている人も少なくないかもしれないが、2008年秋のリーマンショック時に頻発したのが「黒字倒産」。決算上の業績は黒字なのに資金繰りが急速に悪くなった企業が何社も倒産した。逆にいえば、本業がいくら赤字であってもキャッシュが回り続けていれば、企業が潰れることはない。手元資金を厚くしておくことは、企業経営者や財務・経理担当者にとって安心できることでもある。
一方で、ネットキャッシュが積みあがっていることだけを単純に喜べない。成長のための投資や株主への還元という意味で、手元資金を持て余しているという見方もあるからだ。財務が健全だから、すべてが順調とも限らない。