住宅の評価基準が変化する時代へ 価値の落ちない賃貸住宅づくりのポイント

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充実したセカンドライフを過ごしたり、愛着ある土地を次世代に承継したりするための選択肢の一つとして賃貸住宅経営が注目されている。人気が高まる一方で、都心などでは供給の過熱感もある。「将来的には安定経営ができる賃貸住宅とそうでないものとの明暗が分かれる」と話すのは、不動産コンサルタントの長嶋修氏だ。
不動産コンサルタントさくら事務所
会長 長嶋 修
長嶋 修/ながしま おさむ1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。「中立な不動産コンサルタント」としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行う。著書・メディア出演多数

― 土地活用の方法の一つとして賃貸住宅経営が一種のブームになっています。一方で、日本では少子・高齢化が進んでおり、空き家問題も顕在化しています。賃貸住宅市場の競争も激しくなりそうです。

長嶋 国の推計によれば、日本の人口はピークである2008年の1億2808万人から、2050年には約3000万人が減少するとされています。空き家問題もさらに深刻化するでしょう。2013年時点で日本の空き家は約820万戸ありましたが、現在の空き家数は1000万戸を突破していると思われます。2030年には空き家率が30%台に上るという予測もあります。

こうした状況下では、住宅の「勝ち組」と「負け組」がはっきりするようになります。私は、今後不動産は三極化すると考えています。その内容は「価値維持あるいは上昇する」ものが10~15%、「徐々に価値を下げ続ける」ものが70%、「無価値あるいはマイナス価値に向かう」ものが15~20%といったものです。「価値維持あるいは上昇」というと、都心の一等地をイメージするかもしれませんが、郊外や地方都市でも「勝ち組」になれます。逆に、都心でも「負け組」に転落する恐れがあります。

― 立地と言えば、駅からの距離や周辺・生活環境などが重要だとされます。人口が減少する中で、特に地方都市ではどのような動きがあるのでしょうか。

長嶋 人口減少、世帯数減少が進むと二つの大きな流れが起きます。一つは都心や都市部への集中ですが、もう一つは「偏在化」です。一定の人口以下の都市では、税収が減り、上下水道のインフラ修繕やごみ収集などの行政サービス効率が極端に落ちます。この課題を解決するために、国は「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の概念を掲げ、「集まって住む」ことを推進しています。

14年9月には「都市再生特別措置法」が改正され、人口密度を保つ「居住誘導地区」などの指定が可能になりました。現在、全国で約360の自治体が「立地適正化計画」の策定に取り組んでいます。

建物の価値を維持するためのコンディションが重要に

― これから賃貸住宅経営を始める人が「勝ち組」になるためにはどのような点に留意すればいいのでしょうか。

長嶋 今後は首都圏でも「偏在化」が進んでくるでしょう。たとえば、自分の土地が前述した「居住誘導地区」にあればいいのですが、外れていれば不利であることは間違いありません。ですから、将来的な入居者の減少リスクにあらかじめ備えておくことが大切です。

― 将来の環境変化は予測しにくいということですね。将来の家賃を維持するためにはどう備えるべきでしょうか。

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