事業そのものが社会貢献であるべき CSRこそ企業の存在理由

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企業の存在理由は『事業を通じて世の中を良くすること』
岩田 松雄
大阪大学経済学部卒。日産自動車入社後、MBA取得。外資系コンサルティング、日本コカ・コーラを経て、「プリクラ」などを手掛けるアトラス社長、英国自然派化粧品の「ザ・ボディショップ」を運営するイオンフォレスト社長、スターバックスコーヒーCEOを務める。現職は、リーダーシップコンサルティング代表、立教大学ビジネスデザイン研究科 教授。著書に『ミッション』(アスコム)などその他多数http://leadership.jpn.com/
多くの企業にとって、CSR活動が欠かせない取り組みであると認識されつつある。しかし、それは単に寄付をしたりメセナ活動をすることではない。本来、企業の事業活動そのものがCSRであるべきだと主張する人がいる。岩田松雄氏。元スターバックス・ジャパンCEOで、現在はリーダーシップコンサルティング代表を務め、講演、研修、コンサルティングで全国を駆け巡っている。そんな岩田氏に「企業が考えるべきCSRの姿とは何か」について聞いた。

―企業にとってCSR活動が大事だと叫ばれる一方で、利益追求が第一でありCSRは建前に過ぎないと捉える向きもありますが、それについていかがお考えでしょうか。

岩田 一般的にCSR活動については、寄付金やボランティア活動を通じて社会に利益を還元するという考え方です。むろん、私は否定しませんし、大いにやれば良いと思います。私はCSR(企業の社会的責任)という言葉があまり好きではありません。そもそも企業の存在理由(ミッション)は、利益の追求ではなくて「事業を通じて世の中を良くすること」だと考えています。利益はそのための手段であると。本来は自分たちの本業である商品やサービスの提供を通じて世の中に貢献できていることがまず大切であり、事業そのものがCSRであるべきだと考えています。

―もう少し詳しくご説明ください。

岩田 かつて松下幸之助さんが、自社工場内でいやいや電球を磨いている工員さんに対し、「あなたはいい仕事をしていますね」と声をかけたそうです。「なぜ?」と問い返されて、「日が暮れて本を読めなくなった子どもが、あなたが磨いた電球をつけることで本を読み続けるようになる」つまり幸之助さんは、その電球を磨く仕事が世の中に貢献していることを伝えたかったのです。

―自分達の仕事が世の中の役に立っているからこそ、対価としてのお金をもらうということだと。

岩田 商品やサービスが世の中の役に立っているからこそ、お買い上げいただくわけです。利益が出るということは、お客様に価値を認めていただいているということ。しかも黒字企業はきちんと税金も払っている。申し訳ないから、寄付をするという後ろめたい考え方ではなく、事業そのものが世の中の役に立っているのだと経営者は胸を張って語るべきなのです。

―本当に自分たちの事業が社会に貢献しているのかどうかをもう一度見直すべきだと。

岩田 事業そのものが社会に貢献できていなければ、企業は長く存続できません。長寿企業は、世のため人のためというミッションをきちんと持っています。経営者は、まずは「自分のため」に起業したとしても、それが次第に「従業員のため」「地域のため」、最終的には「社会のため」にというようにミッションを進化させて行くべきです。だからこそ企業が発展永続して行くのです。

―企業は自分たちのミッションをどう達成していけばいいのでしょうか。

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