世界標準の安全性でビジネスチャンスを拓く エコテックス認証がもたらす価値とは

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繊維の安全証明「エコテックス認証」
1992年にスイス・オーストリア・ドイツで誕生したエコテックス認証が25年の節目を迎えた。欧州を中心に認証を取得する企業が増え続け、日本企業の関心も高まっている。なぜ、エコテックス認証がトレンドになっているのか。その理由を探った。

環境問題への関心が高い欧州では、ものづくりの過程にまで消費者の厳しい視線が注がれているようだ。環境や人体への安心・安全に対応する商品やシステムについても、そのエビデンスを評価・保証する第三者機関の認証が重要な役割を果たしている。その一つが、1992年に欧州で設立された、繊維製品および生産施設を認証する第三者機関エコテックス国際共同体のエコテックス認証だ。グローバル化が進み、消費者が成熟していく中、日本の企業もビジネス戦略を考える上で世界標準の安心・安全を担保していくことが重要な意味をもつといえよう。

たとえば、人の肌に直接触れる繊維製品は安全性に関する消費者の関心が高く、また染色加工工程において大量消費される電力や水などについては、その環境負荷の高さが課題になっている。このような状況下で、「染色加工や縫製など繊維業界における労働集約的な工程は、欧州ではトルコや東欧、アジアでは中国やベトナムといったエマージング諸国に集まっています。先進諸国への輸出で事業拡大を目指す企業は、エコテックス認証を取得することで自社製品の安全性を積極的にアピールしています。

また欧州の高級ファッションブランドに対して、付加価値の高い製品を提供する日本企業のエコテックス認証取得といった事例もあります」と、世界の環境・安全認証の現状について言及するのは、ニッセンケン品質評価センター エコテックス事業所 所長代理の山崎利明氏だ。

同センターは、エコテックス認証の審査登録を行う日本の認証機関。現在、エコテックス認証機関は欧州の17機関と日本の計18機関あり、約70の国・地域に認証受付窓口が設けられている。認証タイプはいくつかあるが、世界的に普及しているのは「エコテックススタンダード100」(以下、スタンダード100)と呼ばれるものだ。繊維製品の中に人体に有害な物質が含まれず安全であることを、分析試験の結果に基づいて証明する。これまでの認証件数は全世界で約1万企業、延べ16万件以上、うち日本国内では約250企業、延べ4000件以上の実績がある。対象有害物質は300種類以上で、日本よりも厳しい海外諸国の法規制も網羅していることから、世界トップレベルの安心・安全保証といえるだろう。

「2016年の認証実績は世界で約1万6000件と年々増加しています。日本は、たとえば発がん性有害物質の特定芳香族アミンに関する『アゾ規制』が、16年4月にようやく施行されたばかり。欧州はもとより、中国や韓国で規制されている物質でも日本では規制されていない物質もあり、企業が自主規制で対応しているのが実情です。こうしたことから、今後日本企業が自らの安全対応を訴え商機を拡大するために、スタンダード100や、繊維用化学薬剤(染料、助剤、加工剤)を対象にした認証である『エコパスポート』の取得を目指す動きが活性化するのではないでしょうか」と山崎氏は期待している。

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