主催:東洋経済新報社 特別協賛:日本アイ・ビー・エム

特別講演
The Trinity-How to enableAnalysis Capability?
USJの入場者を2010年の入社から6年間で2倍の1460万人に増やしたマーケターの森岡毅氏は、自身のダイエット体験に言及。運動、食事等の因子と、体重という結果の間にある関数を解明し、成功したことを明らかにして「ビジネスでも、望ましい結果を出すために因子をどうすればいいか、について関数をつくれる」と語った。分析力は、データ、分析スキル、分析目的を明確にするジャッジメントの三位一体(トリニティ)で、企業に正しい選択をさせる情報生産力であると定義。データの取り方が変わっても一貫性を担保できるよう文脈も含めて、質の高いデータを蓄積するリサーチャー。文脈に合わせて分析ツールを使いこなすスキルを持つアナリスト。そして、ビジネスを伸ばすための仮説を立て、分析目的を定めるジャッジメントができるマネジメント――の三つの力のかけ算で分析力は決まるとして、3要素をそろえることが必須と強調した。また、データ取得、分析を内製化できるように社内に欠けている人材を外部から招聘し、マーケティング分析の結果をアクションに生かせる組織構造に変革するための戦略的人事の重要性を訴えた。17年1月にUSJを退社した森岡氏は「マーケティングは、社外秘部分が多く、ケーススタディを伝えにくいため、なかなか広がらない。さまざまな専門領域の仲間が持つ暗黙知的な能力を形式知化して提供し、戦略的人事のアドバイスも含めて会社を変えるプラットフォームをつくることで、日本に貢献していきたい」と今後の目標を語った。
IBM講演
AI時代の幕開け
IBMの武田智和氏は、人の決めたルールに基づいてデータを処理していた従来のコンピューティングに対し、AIで言葉など構造化されていないデータも含めて理解、学習し、それに基づいて処理を行う新しいコグニティブ・コンピューティングの概念を紹介した。デジタル化の進展で、構造化データに加えて非構造化、社外、IoTといった多様なデータが活用でき、分析も基本的なものから、AIを使う高度なものまでさまざまな手法を選べると説明。話すおもちゃを介して、子どもが話した内容を分析、興味を持っている分野等を可視化して両親に伝えるビジネスを例に「新たな顧客体験の創造、企業の競争優位確立にはデータ、分析テクノロジーが重要」と訴えた。今は、SNSやメールの情報から性格、価値観をAIが分析する「パーソナリティ・インサイト」に、インフルエンサー分析、行動分析なども組み合わせるマーケティングのアプローチも可能になっている。武田氏は同社のジニー・ロメッティCEOの「データは21世紀の新たな天然資源」という言葉を引用して、データ分析への積極的な取り組みを企業に促した。
ゲストリレーセッションI
ビッグデータを用いた航空機の故障予測分析による定時運航への取り組み
航空機整備を手掛けるJALエンジニアリングの竹村玄氏は、機体の不具合に伴う計画外の整備作業によって遅れや欠航が発生するのを避けるため、機体のセンサーデータを分析し、不具合の予兆を把握、予防整備につなげる取り組みを紹介した。
同社は、15年からIBMの協力で、統計分析ツール、SPSSを導入して、センサーデータの分析プロジェクトに着手。データの欠損やふぞろいを前処理するクレンジングに苦心し、当初の二つのテーマは、データ変化と不具合の関係を発見できなかった。しかし、三つ目の翼のフラップの動きに関するセンサーデータ分析で、動きが遅れる現象の頻度の高まりが、不具合の予兆になると確認。整備現場の提案や知見を生かし、客室空調バルブの故障予測モデルを見つけた経緯にも言及した。「ビッグデータ分析は、データを入力すれば結果は勝手に出ると思い込んでいましたが、さまざまな観点からデータを可視化し、関係性について試行錯誤しながら検討する地道な作業です。現場の経験は、テーマ発掘、仮説構築の重要なカギになります」と述べた。
ゲストリレーセッションII
ビッグデータを活用した太陽光発電量予測精度の向上
―電力需給の効率化に向けて
関西電力の山野貴之氏は、気象衛星画像を使った日射量予測システムや、分析手法の高度化で太陽光発電量の予測精度を向上させる取り組みを紹介した。変動が大きい太陽光発電量の予測精度を上げれば、バックアップする火力発電所の待機稼働数を減らし、コストを抑制できる。ただ、その推進には「電力の需給制御を担当する事業部門側の理解がポイントです」と強調した。分析側のIT部門は、事業部門へのヒアリングでビジネス課題の把握に努め、事業側にデータ分析の意義を理解してもらう勉強会を開催するなど、コミュニケーションを重ねた。
また、いきなり従来の仕組みを抜本的に高度化しようとしても事業側の理解を得られないため、換算係数の見直し、単回帰を重回帰にする分析手法高度化、さらに機械学習導入、とステップを踏んで改善していった。分析スピードなどサービスの質を上げて、事業のパートナーとしての価値を高めることも意識。データ分析は企業競争力に直結するので社内に人材確保が必要と強調。組織として中長期視点で専門家を養成する必要性を訴えた。
閉会の挨拶
「最強のデータ分析」に向けて
IBMの三浦美穂氏は、最も成功するデータ分析組織は、データサイエンティストを業務の近くと、全社を見渡す横断的位置の両方に置くハイブリッドと指摘。そのようなケースにおいて特に価値を発揮する、同社が提供するデータと分析スキルのプラットフォームData Science Experience (DSX)を紹介、複数のデータサイエンティストの共同作業を支援できるとした。さらにデータ活用企業の分析目的の明確化とその実現を支援するDataFirst Methodについても紹介した。