しまむらがネット通販にまだ参入しないワケ EC隆盛の時代にあえて実店舗運営で勝負

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ネット通販は、スマートフォンを操作するだけで自宅まで届けてもらえる手軽さが魅力。その分、しまむらの取り組みがどこまで消費者の需要を掘り起こせるかは不透明だ。新たなシステムの成果を確認したうえで、本格的なネット通販への参入について今後検討していくとみられる。

EC強化ではなく、あくまで実店舗での売り上げ拡大を重視するしまむら。だが、その実店舗の業績がふるわない。

頼みの実店舗が振るわず減益

2017年度中間期(3~8月期)の決算は期初計画を下回り、売上高2841億円(前年同期比1.1%増)、営業利益238億円(同5.2%減)と増収減益で着地した。

野中正人社長は、実店舗の伸び悩みの要因としてネット通販の台頭があることを認めた(写真は2016年4月の決算説明会、編集部撮影)

苦戦した要因は、春夏物の売れ行きが悪化したことだ。上期はテレビCMの本数を増やすなど広告宣伝を強化したが、会社側が想定していたような客数増にはつながらなかった。3~4月に気温が上がらなかったこともあり、とりわけTシャツなどの婦人用のトップスの販売が低迷。パートやアルバイトの店員の人件費上昇も重なった。

客単価も前年と比べ下がっている。消費者が低価格商品を求める傾向は強まってきており、現状では客単価の回復を期待することは難しい。下期は、割引価格や特価商品が強調されたチラシを展開し、客数の増加に向けて立て直しを図る構えだ。

野中社長は、ネット通販の台頭が売り上げの伸び悩みに与えた影響について「ゼロではない。若干はあると思う」と話す。そのうえで、店舗数の拡大は今後も続ける方針を強調した。

コスト増大に加え、消費者の低価格志向という逆風が吹く中、「実店舗重視」の姿勢でどう成長を図るのか。ネット通販の勢いに負けない戦略が求められる。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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