業績比較を容易にする保険契約の新会計基準

保険契約の経済価値を3つの要素で測定

3つ目が「マージン概念」の導入である。保険契約では、保険金等の支払いが予想を上回る可能性を踏まえ、ある程度バッファを持たせた状態で保険料をもらうのが普通だ。このバッファと、保険会社の利益を含めたものをマージンという概念で表す。これら3つのフィルターに加え、表示・開示も統一・充実することで、透明性や比較可能性を向上させることが、IFRS第17号「保険契約」の概念である。

従来以上に問われる投資家への説明責任

決算短信における「会計基準の選択に関する基本的な考え方」によると、IFRS第17号の導入を視野に入れている、あるいは検討しているという日本の保険会社が少なくないことがうかがえる。IFRS第17号は初めての国際的に統一された保険会計基準であるため、導入すれば、これまで難しかった日本の保険会社と、それ以外の企業との業績比較が容易になるというメリットが期待できる。

蓑輪 康喜氏
金融事業部
パートナー

一方で、IFRS第17号は、現行の日本の保険会計と大きく異なっていることから、従来から用いられていた保険料収入や基礎利益などの業績指標(KPI)に影響を与える可能性もある。金融事業部パートナーの蓑輪康喜氏は、「連結決算と個別決算で財務諸表の見た目や損益が大きく変わることも予想されるため、財務諸表を利用する投資家などへの説明が複雑化し、従来以上に説明責任が問われることが予想されます」と指摘する。さらに三輪氏は、キャピタルマネジメントへの影響にも配慮が必要という。「保険契約を経済価値で評価するため、毎期の変動が純資産に影響を及ぼす可能性があります。そのため、資産と負債のマッチングの高度化や販売する保険商品のリスク管理、商品構成の見直しといった影響も考えられます」。

藤原 初美氏
金融事業部
パートナー

日本の保険会社がIFRS第17号を適用するとした場合、21年4月1日以降の事業年度からになると考えられる。その導入にあたっては、前述の3つの測定フィルターをはじめ、表示・開示に対応するためのシステム開発に多大な時間とコストを要することが想定される。「企業が独力でIFRS第17号に対応する場合のコストは、取り扱う保険の種類や会社の持つ情報の質などによって異なります。ただ、それなりの負担があることは、多くの保険会社の共通認識になっているようです。そのため導入について、外部専門家の支援が必要になると考えている企業も少なくないと感じています」と、金融事業部パートナーの藤原初美氏は話す。

保険および会計に強い専門家の協力が重要に

IFRS第17号の導入には、保険および会計に関する豊富な知見が求められる。両方の分野に強い専門家の協力は重要だ。三輪氏は、IFRS第17号に取り組むKPMG/あずさ監査法人の強みを3つ挙げる。

「第1は、グローバル会計事務所としての強みです。IFRS第17号は新しい概念で開発された会計基準であるため、国ごとの会計実務に照らすとさまざまな論点が出てきます。KPMGグループ全体で、IFRS第17号を検討するタスクフォースを設立し、世界的視野で意見交換しています。この知見の共有は大きなメリットです。第2は、あずさ監査法人内にIFRS第17号に関する課題を検討する専門組織を立ち上げたことです。監査上の取り扱いについて、日本の実務に即した判断ができるように体制を整えています。第3は、IFRSに関するセミナーの開催や専門誌・学術誌・業界誌などへの寄稿、書籍出版を積極的に行っており、それを可能とする多数の専門家がいることです」

あずさ監査法人は、10年以降、毎年継続的にIFRS保険会計を題材としたセミナーを開催。17年8月30日にも「IFRS第17号『保険契約』最終基準書解説セミナー」を実施した。18年3月には、IFRS第17号の解説書籍も刊行する予定だ。IFRS第17号導入に悩む企業にとって、あずさ監査法人は専門家として相談しがいのある存在といえそうだ。

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