PPP・PFIの基本と本質 小さな政府で充実の公共サービスと豊かな生活を実現する
― PPP・PFIの定義と特徴を教えてください。
PPP(Public Private Partnership)は公民が役割分担するスキームを指す非常に幅広い概念ですが、世界的に定義されている二つの重要な要素があります。一つはリスク を事前評価し、それを分担した者がリターンを得るという健全な経済原則に基づいていること。もう一つは、契約によってそれらが明記されていることです。これが第三セクターとの大きな違いです。
PFI(Private Finance Initiative)は、1999年に施行されたPFI法に規定されている特定のPPPを指します。PFIでは、官が決定したサービス(建設も含む)を 民が実行します。公共サービスを民間が提供し、官が民へサービス購入料を支払うというスキームが導入されたことは特筆すべきことです。
― PPP・PFIのスキームが誕生した経緯を教えてください。
20世紀中盤までの潮流であった「大きな政府」は財政の肥大化を招き、その反省として「小さな政府」が議論されるようになりました。しかし老朽化し たインフラの整備・更新など、公共サービスの縮小では解決できない問題があります。すなわち小さすぎる政府は、われわれの豊かさを傷つける場合がありま す。小さな政府で豊かな公共サービスを実現するためには、民間の資金とノウハウを活用するPPP・PFIは欠かせません。
― 日本における事例はどのようなものがありますか。
PFIの代表的な成功事例には刑務所があります。建物の建設、警備、矯正のための資格取得教育といった分野で民に移転が進みました。一方で美術館や 図書館など、民の分担が施設の建設のみに限定されている、いわゆるハコモノ型事例も多くありましたが、民間の権限拡大などを目的として、PFI法が11年 に改正されました。
― PFI法の改正点はどのようなものでしょうか。
最も大きな改正点はコンセッション方式の導入です。従来よりも非常に大きな権限である公共施設等運営権を民間が得られるように改正されました。運営 権自体に担保権の設定もでき、資金調達面でも有利になりました。これによって官が公共施設の所有権を有したまま民間へリスクを移転、民間も一定のリスクを 負担する代わりに運営の自由度を高めることができます。もう一つの大きな改正点は、民から官へ事業提案ができる民間提案方式の導入です。民間のノウハウを 事業に生かすとともに、民間の提案に対する知的財産権も尊重される仕組みです。
― 事業者のビジネスチャンスは広がりますか。
今年政府が発表したアクションプランでは、10年間で12兆円規模の目標が掲げられています。そのうちコンセッション方式を利用した空港、上下水道、道路をはじめとしたPFI事業が2兆円です。これらの領域で包括的な運営権を得れば、ダイナミックな戦略を立てられます。
また公的不動産の有効活用など、民間の提案を生かしたさまざまなPPP事業にも期待が持てます。多様なサービスを提供してきた民間企業の提案によっ て限りなく事業範囲は広がります。世界中でも大きな課題となっている公共インフラ分野で良いアイデアを生み出せば、巨大なビジネスチャンスにつながると考 えています。