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成長戦略の実現に向け
官業の民間開放をさらに進めるべき 慶應義塾大学 総合政策学部 教授
グローバルセキュリティ研究所 所長
竹中 平蔵

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― 政府は6月に閣議決定された「日本再興戦略」において、PPP・PFIの事業規模を今後10年間で12兆円(現状4.1兆円)に拡大させる方針です。

竹中:12兆円は決して小さな額ではありませんが、市場規模はもっと大きいと私は考えています。

竹中 平蔵
1951年生まれ。一橋大学卒業後、日本開発銀行、大蔵省主任研究官、ハーバード大学客員准教授などを経て現職。01~06年、小泉内閣において 経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。経済学博士

大まかな試算もできます。日本でキャッシュフローを生むインフラの価値は、ネットの簿価で約90兆円もあります。この半分を民間に開放するだけでも、45兆円規模のPPP・PFIが可能になります。

キャッシュフローを別の方法で計算すると、インフラには公表されているものだけでも約3.7兆円のキャッシュフローがあると見ています。一般的に資産価値はキャッシュフローの10倍から20倍とされ、欧州の例でも同程度の倍率で運営権が売られています。日本の場合、3.7兆円の10倍だとすれば37兆円の規模という計算になります。

財政に魔法の杖はないと言いますが、PPP・PFI、特にコンセッションには、数十兆円規模で財政に貢献できる可能性があるのです。

― 公共事業に対する投資の方法も変わってきそうです。日本のインフラについてどう見ていますか。

竹中:政府が「国土強靭化」を推進しようとしています。これが公共事業の拡大につながるという期待、あるいは批判がありますが、私は異なる観点でとらえるべきだと考えています。

小泉内閣で私が改革に取り組んだ時、日本のGDPに対する公的固定資本形成はピーク時に6.4%もありました。欧米の主要国の2倍から3倍の水準の公共投資をやっていたわけです。

しかし2000年代になると、自民党政権でも民主党政権でも公共事業を減らすようになり、現在はGDP比で約3.2%になっています。主要国に比べ低いとは言えないものの、フランス(3.1%)並みになってきました。

こうして公共投資は減ってきていますが、日本のインフラはまだやるべきことが多いと考えています。成田空港や羽田空港のアクセスなどはその一例です。海外の主要空港との差は歴然です。ある海外の空港では、ゲートを出てから列車に乗るまで階段が一つもなく、スムーズに移動できるなど優れた例が多くあります。

たとえば羽田空港は、飛行機から降りたら新幹線に乗り換えられるというくらいの利便性があれば、と感じます。利用者の視点で、当たり前の整備を当たり前に行う必要があります。

― 今後、PPP・PFIがどのような分野で進むと考えていますか。
また、推進にあたって課題があるとすれば、どんな点でしょうか。

竹中:防衛など、純粋な公共財以外は、多くが民間に開放できると考えます。公立学校の民間委託(公設民営)もその一つです。すでに大阪府・市で取り組みが始まっています。

PPP・PFI推進をかけ声に終わらせないためには、国や地方自治体など公共側が、「PPP・PFIにしっかり取り組む」とコミットメント(約束)をすることが大事です。そうでないと、民間企業は参入の決断ができません。インフラ・ファンドなどについても、一定の規模が見込めないと組成もできませんし、投資家も集まりません。

コミットメントの一つとして「特区」を活用することがよいと私は考えています。産業競争力会議でも、首相主導で規制緩和や税制優遇に取り組む「国家戦略特区」を提言しています。日本の成長戦略の中心として、さらには日本企業の国際競争力向上のためにも、PPP・PFIの推進に大いに期待しています。

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