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「持続可能な生態系」の実現を目指して 中規模総合大学の強みを生かした「挑戦」とは

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
伊豆大島を舞台に、新6次産業の発展を担う人材育成を目標としたプロジェクト「あんど!大島」。今年9月から第2弾「あんど!大島2」が開講予定とあって、さらなる発展が期待されている。受講応募はhttp://www.comp.tmu.ac.jp/tmu-shin6/から(応募締切8月末)
首都大学東京では持続可能な地域社会と生態系の利用を実現するため、観光振興を目標の一つに据え、多分野の研究者が連携して研究を進めている。 東京都が設置した公立の中規模総合大学の強みを生かした、「現場型アクティブラーニング」による社会人教育と並行して実施されている点も大きな特徴だ。小笠原研究をはじめとした、数々のプロジェクトが持つ社会的意義をひも解いた。

多分野の研究者が連携した、小笠原研究と社会人教育 

世界自然遺産に登録されている小笠原諸島は、一度も大陸と地続きになったことがない海洋島である。この小笠原諸島の父島に、日本の大学で唯一、首都大学東京の研究施設がある。

「1968年、小笠原諸島の施政権が米国から日本に返還された直後に学術調査団を派遣して以来、本学は小笠原諸島の調査研究をリードしてきました」。首都大学東京大学院理工学研究科生命科学専攻の可知直毅教授が語る。

可知 直毅
/理工学研究科
生命科学専攻 教授

首都大学東京による小笠原研究は、長い歴史を持つだけでなく、分野横断的に行われているのが大きな特徴だ。生態学が専門の可知教授が生物からアプローチする一方、人文学の研究者は小笠原諸島特有の言語を研究している。

「小笠原諸島には南米のガラパゴスで見られるような独自の生態系がある一方、外来種も多く見つかっています。島は閉じられた環境なので、生態系の研究にふさわしい条件が揃っているのです。さまざまな領域から小笠原諸島を研究し、そこで得た知見を次の世代に伝えていかなければなりません」と、可知教授は研究の意義を強調する。

一方で可知教授は昨年から、伊豆大島での研究プロジェクト「あんど!大島」にも取り組んでいる。このプロジェクトは、観光を軸に地場産業と組み合わせた「新6次産業」を提案できる人材を育成するべくスタートした。

かつては離島ブームで賑わった伊豆大島だが、近年は観光客が減ってしまった。以前から教養科目の学外体験授業で訪れるなど密接な関係を築いてきたこと、教育に最適な規模の島であることなどから、東京都が設置した公立の総合大学として島の振興に貢献したいと考え実施に至った。

首都大学東京の小笠原研究施設(父島)。大学が持つ唯一の研究拠点として、学内外の多くの研究者の研究を、半世紀近くにわたり支えてきた

「本学に蓄積のある現場型アクティブラーニングの経験を活用した、社会人教育の一環です。観光ビジネス単体では浮き沈みが激しいので、収入源の柱とするにはリスクが高いと考えた結果、『新6次産業』にたどり着きました。昨年は4回の講座を開き、事業提案ができるレベルまで到達しました。今年度は『あんど!大島2』として、財政面も考慮した具体的な事業化を視野に入れた講座を開く予定です」(可知教授)

地域への直接的な貢献もミッションの一つ

さらに首都大学東京は、人材育成を目的の一つとして「地域共創科学研究センター」を稼動させている。同大都市環境科学研究科観光科学域の沼田真也教授は、センターの概要をこう説明する。

沼田 真也
/都市環境科学研究科
観光科学域 教授

「いろいろな分野の研究者が参画し、地域への直接的な貢献をミッションとして取り組んでいます。たとえば『TAMA NEXTファーマーズ プログラム』という東京都多摩地域の農業後継者塾では、地域の信用金庫と連携し、経営のセンスを持った次世代の農業経営者を育成しています。自治体職員のスキルアップを図る『地域創生スクール』では、自治体職員による科学的根拠に基づいた地域創生事業の実施などを目指し、データ解析技術などのスキルを付けられるプログラムが用意されています。また生態学の観点としては、今後『生物多様性スクール』を立ち上げて、自治体を支援することも考えています。自治体は生物多様性基本法により生物多様性地域戦略の策定を努力義務とされています。しかしデータの蓄積もなく、手の付けどころがわからないというのが実情なのです。」

沼田教授は、自然との触れ合いなどを取りいれた観光手法「自然ツーリズム」の研究が専門。そこに生態学などの知見を加え、自然保護と観光を両立させるべく研究を進めているという。

「私は今、マレーシアから自然と農村が残る地域の観光開発を依頼されていますが、里山的な生物の保全を観光に転換するプランを提案しようと考えています。観光振興において最も大事なのは、あくまでも自然保護と両立させ、地域社会と生態系を維持することなのです」

恵まれた研究環境で目指す「エコツーリズムの体系化」

持続可能な生態系の実現は、可知教授と沼田教授に共通するテーマだ。そのためには人材育成が重要で、出口の一つとして観光が軸になるという認識も、両教授は共有している。

「生態系の維持という目標に近づくためには、定義があいまいなまま使われている『エコツーリズム』という概念を、学術的な知見に基づいて体系化し広く共有する必要があります」と、沼田教授は強調する。

画像を拡大自然を利用した観光を振興するためにはツーリズム、地域社会、そして生態系のバランスを見極め、持続可能となる条件を見出すことが不可欠である

こうした研究は、多様な分野の専門家が連携して行うことが望ましい。その点で首都大学東京は「恵まれた環境にある」と、可知教授が指摘する。

「本学は中規模大学であるため小回りが利きますし、研究者がフランクに直接対話できます。そのうえ、総合大学としてさまざまな分野の研究者が揃っていますし、学内の『総合研究推進機構 URA室』という組織が研究を支援してくれています」

もちろん、多様な分野の研究者が直接話し合える環境は、学生にも良い影響をもたらすはずだ。実際、可知教授も沼田教授も「本学は教員同士も、教員と学生も顔が分かる規模です。教員と学生の距離感も小さく、直接話す機会が多く用意されている」と、口を揃える。

世界各地の美しい自然を保護しながら、無理なく生態系を利用するにはどうすればいいか、観光はその方策の一つになり得るのか。首都大学東京が取り組む研究は、今後ますます重要性を増し、注目と期待を高めていくに違いない。