「持続可能な生態系」の実現を目指して 中規模総合大学の強みを生かした「挑戦」とは
首都大学東京では持続可能な地域社会と生態系の利用を実現するため、観光振興を目標の一つに据え、多分野の研究者が連携して研究を進めている。 東京都が設置した公立の中規模総合大学の強みを生かした、「現場型アクティブラーニング」による社会人教育と並行して実施されている点も大きな特徴だ。小笠原研究をはじめとした、数々のプロジェクトが持つ社会的意義をひも解いた。
多分野の研究者が連携した、小笠原研究と社会人教育
世界自然遺産に登録されている小笠原諸島は、一度も大陸と地続きになったことがない海洋島である。この小笠原諸島の父島に、日本の大学で唯一、首都大学東京の研究施設がある。
「1968年、小笠原諸島の施政権が米国から日本に返還された直後に学術調査団を派遣して以来、本学は小笠原諸島の調査研究をリードしてきました」。首都大学東京大学院理工学研究科生命科学専攻の可知直毅教授が語る。
首都大学東京による小笠原研究は、長い歴史を持つだけでなく、分野横断的に行われているのが大きな特徴だ。生態学が専門の可知教授が生物からアプローチする一方、人文学の研究者は小笠原諸島特有の言語を研究している。
「小笠原諸島には南米のガラパゴスで見られるような独自の生態系がある一方、外来種も多く見つかっています。島は閉じられた環境なので、生態系の研究にふさわしい条件が揃っているのです。さまざまな領域から小笠原諸島を研究し、そこで得た知見を次の世代に伝えていかなければなりません」と、可知教授は研究の意義を強調する。
一方で可知教授は昨年から、伊豆大島での研究プロジェクト「あんど!大島」にも取り組んでいる。このプロジェクトは、観光を軸に地場産業と組み合わせた「新6次産業」を提案できる人材を育成するべくスタートした。