黒田総裁、消費増税の修正論議にクギ 黒田総裁「脱デフレと消費増税は両立する」

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8月8日、日銀の黒田東彦総裁は、来春に予定されている消費増税について、政府内外で取りざたされている計画修正の動きにくぎを刺した。都内で同日撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 8日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は8日の政策決定会合後の記者会見で、来春に予定されている消費増税について、政府内外で取りざたされている計画修正の動きにくぎを刺した。

「脱デフレと消費増税は両立する」。総裁の踏み込んだ発言は、増税案が変更された場合、政府の財政再建の機運が後退し、日銀による大規模な国債買い入れが「財政ファイナンス(穴埋め)」と市場に受けとられることを警戒したためとみられる。

国内景気は黒田日銀の異次元緩和などを追い風にして、回復軌道に乗りつつある。しかし、消費増税をめぐる混乱から財政再建への懸念が強まり、長期金利の上昇など市場に予期せぬ混乱が生じれば、異次元緩和がもたらしたせっかくの効果が減殺され、追加措置を迫られる可能性も否定できない。黒田総裁の発言には、そうした危惧も透けて見える。

景気に悪影響を与えかねない消費増税はデフレ脱却の目標と矛盾するのではないか。この日の会見で政策の整合性を問われた総裁は、一般論としながらも、その両立可能性を明言した。消費増税は駆け込み需要やその反動などで景気の振幅を大きくするとともに、物価上昇による実質所得の減少を招き、個人消費を冷え込ませるおそれがある。デフレ脱却は経済・物価の持続的な上昇が前提であり、消費増税がその障害になるとの見方は根強くある。

しかし、総裁は日銀が2014年度、2015年度ともに1%を超える経済成長率を見込んでいると述べ、予定通り消費増税が実施されても「景気の前向きな循環は維持される」と強調した。日銀がゼロ%台半ばとみている潜在成長率を上回る成長が確保されれば、需給ギャップの改善は続き、デフレ脱却の方向性は維持される、との見立てだ。

消費税については、来春から2段階で引き上げが予定されているが、その計画が修正されれば、すでに増税を織り込んでいる債券市場が動揺するなど、不測の事態が生じると懸念する声は政府・日銀内にも多い。

特に日銀は4月の異次元緩和の導入によって、市場で発行される国債の7割程度を吸い上げる大規模な国債買い入れを進めている。これを市場が財政従属や財政ファイナンスと受けとめ、長期金利が急上昇する、というのは何としても避けたい不安シナリオだ。しかし、ある国際金融筋は、消費増税が延期や見送りなどになった場合、国債市場で債券売りを仕掛けようと狙っている向きは少なくないと明かす。

日銀による異次元緩和の効果もあり、景気はようやく回復局面に入った。消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)も6月にプラスに転じたばかりで、日銀が目標に掲げる2%の上昇率を実現するには「まだまだ時間がかかる」(黒田総裁)のが実情。総裁は、消費増税が先送りされた場合でも「粛々と金融緩和を続ける」と冷静に語ったが、長期金利の上昇は日銀が重視する異次元緩和の波及経路の遮断も引き起こしかねない。「戦力の逐次投入はしない」とする黒田日銀にとって、最大のテールリスクは消費税議論の行方かも知れない。

(伊藤純夫 編集;北松克朗)

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