絶好調企業が実践する営業戦略のすべて 本当に優れた、営業戦略・戦術とは何か?
急成長の裏には顧客情報を徹底的に活用する仕組みがあった
M&Aの仲人役ビジネスで、2006年のIPO以来、10年で9倍に成長した日本M&Aセンターの大山敬義氏は、経営視点からSFA導入の意義を語った。「経営者がシステムに期待することは、個々の営業担当の成果を高めることではなく、会社のビジネスモデルを効率的に拡大すること」と強調。顧客ニーズを発掘して売り上げを増やす、商談成約率を高める、時間効率の生産性を上げる、という成長の三つのポイントへのSFA活用を説明した。
同社は、全案件を進捗ステージごとにSFAで管理。成約率や案件化率から、成約数目標に達するために必要な案件数、それを確保するために必要な見込み客数がわかるので、先を読む経営を実現できる。また、案件の可視化、情報共有によってマッチングを容易にし、「SFAを擬似的な取引所」にすることで、成約率を向上。SFA上で顧客企業の情報も整理して的確な提案を支援できる。さらに、社員のコール、アポイントの数などの行動指標もSFAで管理して人材育成にも活用している。一方、一定期間、データ入力をしない社員は、システムにアクセスできなくなり、解除には社長承認を必要とする仕組みも導入。「システムは、顧客データという宝を入れなければ、機能しません。顧客管理の効率化とは次元の異なる経営戦略的意義を理解すれば、皆さんも、SFAによって、今、自分が何をすべきか、先を読む仕事ができるはずです」と語った。
市場の変化に対応する営業マネジメントとその実態
セールスフォースの津野田潤氏は、市場の変化、営業の質向上の課題に、プランニングとセルフマネジメント強化に取り組んだ事例を報告した。
同社では近年、短期で受注できる”ホット”な引き合いが減少。月間の目標達成を最優先し、翌月以降の案件への取り組みが手薄になる悪循環に陥った。そこで、案件管理のやり方を変更。成約率3分の1なら、目標の3倍の商談総額の案件を持つというオペレーションから、進捗段階ごとの商談額と、段階に応じた確度を掛け合わせた期待収益の考えを導入した。また、四半期単位の目標管理を取り入れ、翌月、翌々月の状況も可視化するようにSFAのダッシュボードを変更。ギャップを指摘される前に自ら対策を講じるように促した。さらに、目標達成者と未達成者とでは、内勤営業と外勤営業が協業する顧客層の業績に大きな差があることに着目。同層へのアプローチのノウハウを体系化したナレッジを全営業担当に展開した。
生産性向上では、成績上位者が顧客からヒアリングしている内容を必須確認事項としてSFAに入力させるように設定。記述内容についてもガイドを定め、受注予定日から逆算して、どのようなステップが発生するかを記述させた。「営業担当が目標を達成できるよう支援を行うべき。規模拡大で一人ひとりへのマネジメントが薄くなりがちになるので、セルフマネジメントも重視しました」と振り返った。