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国際税務の激動に日系企業がすべき対策とは

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いま国際税務に、大きな変革期が訪れているのをご存知だろうか。

その背景となっているのが「BEPSプロジェクト」だ。BEPSとは「Base Erosion and Profit Shifting(税源浸食と利益移転)」。企業の急激なグローバル化や電子取引の増加に既存の税制が追いつかないなか、一部のグローバル企業による「行き過ぎた節税」に対応するため、OECD(経済協力開発機構)が2012年に立ち上げたプロジェクトである。2015年、OECDは当該プロジェクトで議論された15項目に係る最終報告書を公表したが、いま、とりわけ多くの企業が注視しているのが「行動13」。連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業に対して「マスターファイル」「CbCR(国別報告書)」「ローカルファイル」の3階層の枠組みからなる移転価格文書を作成させることが勧告されている。

行動13の勧告内容に従いながら世界各国で法制化が進むに伴い、これまで要求されていなかったデータの報告義務が発生することにより、企業にとって大きな負担がかかるとみられている。

トムソン・ロイター
タックス&アカウンティング部門
セールスマネージャー

木村 靖史

しかし、トムソン・ロイター タックス&アカウンティング部門セールスマネージャーの木村靖史氏は「行動13は、ただのはじまりに過ぎません。国際税務は今後さらに厳しくなっていくと思われます」と語る。税務当局は、法制化とともにITなど新たな技術活用を進めることで、これまで把握しきれていなかった移転価格などの企業情報をグローバルレベルでより分析しやすくなっていく。それに対応していくために、企業は税金を納める側としての然るべき準備をすべき時がやってきているのだ。

欧米企業では、税金がコストの一つであるという意識が根付いており、税務部門の社内地位も高い。そのためBEPSプロジェクトの勧告内容を踏まえた新たな国際課税ルールについては負担が増えるというよりむしろ、さらなる成長につなげられるきっかけと考え、すでに多くの企業が取り組みをはじめているという。一方、日系企業はというと、良くも悪くも真面目に対応し当局から言われた税を納めるという傾向が依然として強くある。

同部門
シニア ソリューション
コンサルタント

相川 恵理子

同社のタックス&アカウンティング部門シニア ソリューション コンサルタントの相川恵理子氏は「BEPS行動13は新たなルールとして順守していくべきものですが、世界各国において実務に与える影響が未知のため、どの程度の対応が必要なのかを見極めることが難しいのも事実です。しかし、いまから税務部門強化の取り組みをはじめなければ、今後訪れるさらなる国際税務の変化に対応できなくなってしまいます」と語る。

海外事業におけるリスクとコストはもちろん、国際税務の大きな変化に対応していくために、日系企業は何をすればいいのだろうか。

「まずはグローバルレベルでの税務の共通基盤をつくることが大切です。その上で、先を見据えたロードマップを描いていくことです」(木村氏)

税務部門をバックオフィスと考える時代は、すでに終わりを告げようとしている。これから訪れる新しい国際税務において、後手に回らないための術はあるのだろうか。以下では、トムソン・ロイターが提案する、世界標準の税務部門を組織するための具体策について紹介する。

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