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清水銀行とSBI証券の提携が見せた理想形 地方の重要性を見据えた決断

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清水銀行(本店:静岡県静岡市)は2017年3月30日、SBI証券と提携し、投資信託や国内株式をはじめとする金融商品・サービスの提供を開始した。SBI証券が地方銀行と提携するのは清水銀行が初めてだ。清水銀行は近年、若年層の取引拡大に向けたサービスを積極的に打ち出しており、今回の提携もその一環だ。同行の豊島勝一郎頭取に、その狙いなどを聞いた。

清水銀行がSBI証券の金融商品の販売を開始

清水銀行は、今回の金融商品仲介業での提携により、SBI証券が取扱う日本最大級2400本を超える投資信託(うち手数料無料のノーロード投信:1100本以上)など、豊富な商品ラインナップをそのまま同行の顧客に提供できるようになる。

清水銀行 頭取 豊島勝一郎氏

清水銀行の豊島勝一郎頭取は、その背景を次のように語る。「日銀のマイナス金利政策により銀行の定期預金金利が下がる中、預貯金だけでは資産形成が難しくなっています。政府も『貯蓄から投資へ』の制度改革を進めているように、個人投資家の皆さまの資本市場への参加を促し、リスク資産への投資を啓発するのも当行の役割だと感じています。インターネットを通じた投資信託など、金融商品・サービスの拡充も不可欠です。ただし、それを自前で行うのは大きな投資が必要になりますが、国内ネット証券として実績のあるSBI証券と提携することで、ローコストでのサービス開始が可能になりました」

SBI証券は国内ネット証券で唯一「370万口座」を突破しているほか、預かり資産残高も10兆円を超える顧客基盤を有している。充実した商品ラインナップ、安価な手数料などが顧客から高い支持を受け、本提携にも大きなメリットとなった。口座数は大手対面証券を含めた証券業界全体でも3位に位置する。また、ネット証券「お客さま満足度ランキング第1位」(※)も獲得している。

一方、清水銀行は、設立90年近くの長い歴史を持つ地域金融機関で、静岡県内を中心に79店舗の店舗網を有し、地域の産業と生活に密着した営業活動を行ってきた。近年は、個人営業強化にも注力しており、2016年4月には、若年層の取引拡大に向けて同行初となるインターネット支店「清水みなとインターネット支店」を開設している。

※オリコン日本顧客満足度ランキング2016年

顧客のニーズの変化に対応し新しい商品・サービスを提供

「お客様、特に若年層のお客様にとって、銀行に期待する内容が大きく変化しています。それに応える利便性の高い商品やサービスを提供していかなければならないと感じています」と豊島頭取は話す。

銀行に口座を持っていても、店舗をほとんど利用しないという人が増えている。口座の管理はインターネットで、現金の引き出しはコンビニや駅のATMで事足りるからだ。午後3時までに店舗に行き、並ぶのが面倒という声も少なくない。

清水銀行では、口座開設から投資商品にいたるまで、顧客へのサポート窓口をしっかりと整えている。提携で増える選択肢に、少しの不安でも解消したい現れだ。

清水銀行では、これらの声に応え、真に顧客が求める商品やサービスの提供に力を入れている。前述した、インターネット支店もその一つだ。インターネットを通じて、いつでも新規口座申込ができるだけでなく、スマートフォンなどで24時間、365日の取引が可能だ。さらに定期預金についても、インターネット支店専用定期預金が用意され、お得な金利が適用されるという。

インターネット支店「清水みなとインターネット支店」は2016年の4月にオープンしたが「静岡県内だけでなく、全国のお客様からお申し込みをいただき、定期預金についても弊行の実績をはるかに上回るペースで増えています」(豊島頭取)という。さっそくその効果が出ているようだ。

清水みなとインターネット支店は同行初のインターネット支店として好スタートを切った。

清水銀行はほかにも、地方銀行の先駆けとなる利便性の高いサービス創出に積極的に取り組んでいる。2016年10月には、共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営するロイヤリティ マーケティングと提携し、キャッシュカード、クレジットカード、共通ポイントの「Ponta カード」が一体となった「SHIMIZU With Card(しみずウィズカード)」を発行した。共通ポイントとキャッシュカードの一体化は全国の金融機関でも初めてだ。キャッシュカードでの買い物のほか、同行の金融サービスの取引に応じてもポイントが貯まる。

「このほか、来店不要で利用できる商品の拡充など、若年層のお客様に、さらに活用していただける銀行を目指していきます」と豊島頭取は力を込める。

地方創生を実現する産業創出支援にも力を入れる

地方創生が日本の大きなテーマになっている。各地域の金融機関に対する期待も大きい。

清水銀行の本店がある静岡市は、中世には今川氏の城下町として、江戸時代には徳川家康が駿府に城を構え、大御所として政治を行ったことから大いに栄えた。

当時、江戸から多くの職人が招かれたこともあって、同市は製造業を主体とするものづくり産業が発達した。だが今、これらの企業を取り巻く環境は厳しくなっている。円高や人口減少、少子高齢化などの動向をはじめ、グローバル化の進展にともなう生産拠点の海外進出なども相次いでいる。

豊島頭取は「東京などの大都市圏に進学した若者がなかなか帰ってきてくれないというのも地元にいる人たちの悩みです。もちろん、帰ってきてもらうには魅力的な産業がなければなりません。産業創出の支援などにも引き続き力を入れていきます」と語る。

「さらに」と豊島頭取は続ける。「その鍵になるのが人材です。当行はこれまでも、人材を重要な経営資源ととらえ、その育成に努めてきました。今後も、お客様の事業を理解した上で、最適なソリューションを提供するとともに、若手行員を含め、行員一人ひとりの意見を尊重し、前例のないことにも積極的に挑戦していきます」と話す。

静岡県清水区を舞台にしたアニメ『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』のCMやポスター制作のタイアップなど、地元のブランディング向上につなげる活動も好評だ。

地域企業の資金調達なども視野に
「存在意義の発揮」を目指す

SBI証券は、地域金融機関との連携を推進し、今後5年で預かり資産を5倍に伸ばす起爆剤にする意気込みだ。また2015年には、同グループのSBIインベストメントがフィンテック分野の有望ベンチャーに投資する「FinTechファンド」を設立し、清水銀行も出資を行っている。この親密な関係が、今回の金融商品仲介業でのサービス提携にもつながった。

豊島頭取は、「当行は2016年4月より、期間4年の第26次中期経営計画『ADVANCE AS ONE ~地域・お客さまとともに、持続的成長を実現するために~』をスタートさせました。ここでは、目指す姿を『存在意義の発揮』としています」と意気込みを語る。金融商品の拡充をはじめとする新しい取り組みが、その一助になるに違いない。

同行に限らず、そもそも地銀は地域密着型の営業で顧客と厚い信頼関係を築いている。SBI証券と提携することで「業界屈指の格安手数料で最高水準のサービス」を、これまで投資に縁のなかった地方の投資初心者層・若年層・資産形成層の顧客に提供し、安心して利用できるようになる。SBI証券が地方銀行と提携するのは清水銀行が初めてだが、今後の「ベンチマーク」としても今回の提携が注目されることになりそうだ。

豊島頭取は「地域金融機関としての原点は地域の産業の育成です。インターネットの活用で実績のあるSBIグループとの連携により、将来的には地域の企業の情報発信や資金調達などでも支援できるようにしたいと考えています」と抱負を語る。同行のさらなる挑戦に大いに期待したいところだ。

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