慶應ビジネススクール

EMBAプログラムの核はビジョナリー科目 scene 3

拡大
縮小
大学を卒業後、不動産会社でファイナンス・営業・子会社の事業再生のキャリアを積みました。29才で証券業へ転身し新規事業の立ち上げに携わり、39才で生命再保険会社の日本進出にあたり、創立メンバーとして参画し現在に至っています。
20代で子会社の経営に携わり事業再生も体験したこと、日本で認知のなかった生命再保険事業の創業に苦労した経験から、経営を体系立てて学び直す必要を痛感していました。現在のグローバル企業では、Ph.D.、MBAの学位保持者、また医師免許、数理資格、CPAの資格保持者が多く、多国籍・多文化な従業員が働く職場です。自分のキャリアにおける最後の10余年を見据えると、専門性に加えて多角的な視野を持つ必要性を感じていたので、新たに開設されるEMBAプログラムは絶好の機会と考えました。
 
Executive MBA 第1期修了生
〜渡邉 靖久〜
RGAリインシュアランス・カンパニー
コーポレート・バイスプレジデント、CFO
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)が、日本初の中核ミドル層に特化した新しいMBAプログラム「Executive MBA(EMBA)」を2015年に開設して初めての修了生を送り出した。総合的な経営管理能力をもつ最高経営幹部(トップマネジメント)が歩を進める瞬間だ。果たして学生たちは何を学んだのか。

入学直後から感じる自身の変化

2年間のEMBAプログラムは、全員参加が義務付けられた入学ビジョナリー合宿で幕を開けました。

合宿で顔を合わせた1期生たちに「2052年グローバル予測」という題材が提示され「40年後の食糧問題、エネルギー問題、社会の課題、貧困、人口密集、世界経済の成長による地球破壊」について2泊3日で議論したのです。

経験豊富な現役メンバー同士による、ビジネス論や今起きている事業戦略を議論する合宿であろうと期待していたのですが、この題材にはとても困惑しました。この合宿では経済的利潤の追求がもたらす負の側面について理解しきれず、予測の前提に誤りがあると疑ってみたり企業成長の重要性を主張ばかりしていたと思います。所属していた金融グループ内でもCSRやESGの重要性に理解は示しつつも、自由経済がもたらす富のほうの恩恵に、議論が集中していたことを思い出します。

このビジョナリーという科目は、社会課題に対するビジネスの答えを2年一貫で議論する科目です。入学合宿の頃には拒否反応も強かった「企業成長機会と社会的責任の両立」というテーマにも、議論が深まるにつれ慣れていき、そして考え方に変化が起きたのです。ビジョナリー金融グループでは、徐々に「金融業が果たすべき社会課題への取り組み」意識が醸成され、グリーン投資、ESG投資、サステナビリティ社会を日本で実現するための調査・研究をしたいという欲求が私に生まれました。そして、金融グループ有志による交渉の末、オランダ大使館の全面協力を得て、ユニリーバ、ハイネケン、フィリップス、ING銀行、APG年金基金等といったサステナビリティのグローバルリーダー企業の訪問と、エグゼクティブ・インタビューが実現しました。

海外フィールドが確実に思考を変える

オランダ訪問の体験、特にハイネケン社での出来事は私に大きな影響を与えてくれました。エグゼクティブと議論した際、長期的視点に基づくサステナビリティ活動がCSRを主たる目的とした活動であり、しかしROE経営観点からは業績の足かせになっているのではないかと疑問を呈した時でした。役員が硬直した顔つきでテーブルを叩き「リーダーは短期的利益の誘惑に負けてはならない、サステナビリティの取り組みも目標利益の到達も両立するのだ!CEOが安心して長期的視野をもってビジネスをリード出来るよう、KPIを設定して経営を牽引するのがお前の役割だ」と声を荒らげたのです。和やかな会議室の雰囲気が、瞬時に凍てつきました。

この出来事があまりに衝撃的だったため、オランダ訪問メンバー全員が、“CEOと同じ目線に立って重責を担うことがリーダーの使命である”との想いと連帯感を強めました。メンバーの意識に変革が起きた実感があります。

この海外フィールドはEMBAプログラム専門科目で、当初は別の渡航先やプログラムが設定されていましたが、ビジョナリー科目の主旨に企業からの賛同を得てオランダ訪問が実現しました。2期生も自主的に企画を提案し、北欧バイオベンチャー調査を実現しています。独自性を尊重して、全面的なサポートをしてくれた岡田正大教授に感謝するとともに、海外フィールドがEMBAプログラムの大きな柱になってくれることを期待します。

出版されるEMBAプログラムの集大成

2年間を振り返ると、ケース・スタディ中心のコア科目と専門科目では、着眼点を異にした学びがありました。ケース・スタディではケースの当事者だったクラスメイトからその内情を共有でき、専門科目では、多様なバックグラウンドを持つメンバーが利害を超えて協力することで予想外の成果が出るイノベーション体験ができました。ダイバーシティによる多角的視点、協働によるアウトプットという言葉が陳腐に聞こえてしまうほどの成果です。この原体験もリーダーシップ・スタイルに大きな変化をもたらしてくれています。

入学から修了まで続いたビジョナリー研究の旅こそが、EMBAリーダーシップ開発の礎であると確信したのは、39名のクラスメイトが共同執筆した「未来への提言(仮題)」を読み終えた時でした。精神的にも成長を遂げた39名が、修了後に社会で果たす役割と未来への想いを提言にまとめました。現在は出版に向けた準備をしています。

私はEMBAプログラムの最大価値は「リーダーとして未来に責任を持つ姿勢」を仲間と学んだ事であったと実感しています。これからは週末を自由に過ごすことができます。今後は趣味で始めたいけばな池坊を通して人間性を高めたいと考えています。また、Keio EMBA 39ersの一員として自分の持ち場で未来を牽引していきたいと思います。

お問い合わせ
慶應義塾大学
大学院経営管理研究科
Executive MBA
 EMBA 情報はこちら

EMBA1期生の成果

EMBAプログラム資料はこちら