革新機構・志賀会長「東芝は検討していない」 駆け込み寺化する官民ファンドのトップ激白

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――半導体業界では、東芝のメモリ事業売却が大きな話題です。「機構の出番だ」という声もありますが。

そんな声はツイッターぐらいでしか聞いていない。頼まれてもいないし検討もしていない。何もしていない。シャープの時と全然違ってうそはつかない。同じ半導体でも(傘下の)ルネサスはマイコン系で、メモリの東芝と一緒になってもシナジーがあるとは思えない。

志賀俊之(しが・としゆき)/1953年生まれ。1976年日産自動車入社。2005年COO、2013年に代表取締役副会長(現職だが代表権はINCJ会長就任時に返上)。2015年から現職(撮影:梅谷秀司)

産業革新機構は産業競争力強化法という法律に基づき設置されており、成長事業にしか投資できない。

昨年のシャープの時は、(INCJの投資先の)ジャパンディスプレイとシャープの液晶事業の統合や、シャープの家電事業と東芝の家電事業の統合を狙っていて、業界再編による成長戦略があった。銀行に債権放棄をお願いしたのは、法律でわれわれの資金は投資先の借金返済には1円も充てられないことになっているから。借金返済に1円でも充てたら、私が国会に喚問されることになる。その結果、鴻海と成長投資に充てられる金額は同じでも、トータルの投資額が少なかったからダメになった。

今東芝の件を頼まれていない最大の理由は、そのニーズがないからだと思う。フラッシュメモリを買収するだけでは意味がない。成長戦略が描けず我々としても身動きができない。資金繰りに困っている会社の資産を、税金を使ってうちが持つのはおかしい。

原発事業への投資は国がやるべき

――成長シナリオが描けたら投資もありうるのでしょうか。

どこかのフラッシュメモリ会社から「東芝と一緒になってシナジーを作りたいが資金が足りないから一緒に投資してくれ。将来的にはIPOも考えている」というシナリオを頼まれれば検討できるかもしれないが、機構1社で持つのはイグジットを考えると難しい。

――東芝の原発事業へ投資する可能性はありますか。

純粋に国がやるべきだ。どうしても原発が日本のエネルギー政策上必要で、今後の廃炉を考えると東芝の技術が必要だというなら、国が国営化すべきだ。官民ファンドのやることではない。

――資金の出し手として都合よく使われる不安は。

少なくとも私が会長兼CEOをやっている限りは、そんな都合のいいお財布にはならない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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