2001年からIoTの前身であるM2M(Machine to Machine)ビジネスをサポートしてきたKDDI株式会社は、本格的なIoT時代の到来に向けて、企業のIoTビジネスの発展に、どのように貢献していくのだろうか。ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏に聞いた。
IoTでビジネスが変わる
――今、日本国内のIoT市場や、KDDIの現況は。
年平均成長率23.6%という高い水準で伸びている。国内市場において、これほど伸びている市場はないのではないか。
ビジネスIoT企画部長
原田圭悟氏
KDDIの法人M2M/IoT回線の契約数も、この15年間で指数関数的と言っていいほど順調に拡大している。主な要因としては、電力会社の電力量計であるスマートメーターの普及によるものだ。
かつては毎月検針員が各戸を回って目視で計測していた電力量が、スマートメーターで自動的に集計されるようになった。多くの国内の電力会社さまに、KDDIのネットワークをご利用いただいている。
スマートメーターは、電気で年間100万台というペースで導入が進んでいるが、これが2023年まで続いていく。今後はガスや水道でも伸びていくことが予測できるし、インフラ以外にもさまざまな産業においてIoT化が進んでいくだろう。
――M2MからIoTに変わり、何が変わったか。
大きく分けて、3つの変化がある。
まずは、モノのネットワーク社会の到来だ。2016年時点では、50億人のヒトに対し、スマートフォンや携帯電話といった通信モジュールの付いたデバイスが1台ずつ普及している状況だが、2025年には500億個ものIoTデバイスが行き渡ると推測されている。
次に、業種を超えた連携が始まることが挙げられるだろう。たとえば、自転車がインターネットにつながることで、健康・フィットネス、メンテナンス、自転車保険など、多種多様な業種とつながって、新たなサービスが生まれる可能性を秘めている。
そして、これは自戒の念を込めているが、手段を売る時代から、その先にある顧客体験価値を売る時代へと変化した。IoT以前のKDDIは、ネットワークやサーバを企業に売るビジネスにとどまっていたが、IoTが企業の先にいる一般の消費者までつないでくれると考えている。今後は、消費者の生活向上まで視野に入れながら、企業が提供するIoTサービスを全面的に下支えしていきたい。
IoTビジネスを始めたいと思ったら
――IoTに関心を寄せている企業がぶつかる壁には、どのようなものがあるか。
今はまだIoTをどのように自社のビジネスに活かすべきか、模索中の企業が多い。その場合、既存のビジネスに当てはめて、コスト削減や業務効率化にIoTを使おうと考えがちだが、投資対効果の観点から、あまりうまく当てはまらないケースが多いのが実情だ。
そうしたコストリダクション型ではなく、企業のビジネスを拡大する方向へ目を向けたほうが、長期的な目で見ると大きな成果を生み出せると考えている。われわれにご相談いただいた際には、コスト削減のニーズにただ応えるだけではなく、お客さまの売上増加に寄与する提案もアドオンでできるようにしている。
――やはりIoTの導入を検討するには、社内にデータサイエンティストのようなデータ活用に知見を持つ人間が必要か。
そんなことはない。われわれの方でデータ分析を得意とするメンバーと業務を提案するメンバーの二層体制でチームを作っているので、安心して声を掛けてもらいたい。逆に、われわれはお客さまの業務を熟知しているわけではないので、相談しながら新しいビジネスを共に創っていければと考えている。
――KDDIが企業同士のハブになることもあるのか。
実際に始めている。新しいデータが見えてくると、他のお客さまのビジネスと組み合わせたアイデアが生まれてくることもあるので、われわれのほうから業種の異なるお客さま同士をつなぎ合わせて進めている。
また、KDDIが保有する位置情報ビッグデータ(KDDIがお客さまから同意の上取得し、誰の情報であるかわからない形式に加工した位置情報データ)・基地局で収集される気象情報、オープンデータ、環境センシングデータなどのデータと組み合わせることで、新たな付加価値が生み出せるケースも出てきている。
IoTネットワークに最適なLPWA
――現状、IoTの普及の壁となっているものは何か。
IoTデバイスに“電源が必要なこと”と、データの送受信に必要な“通信コスト負担”の2点が挙げられるだろう。
これを解決するために生まれたのがLPWA(Low Power Wide Area)だ。LPWAには、「省電力・エリアが広い・低コスト」という3つの特徴がある。
まず省電力についてだが、IoTデバイスはスマートフォンと違って、常時、着信可能な状態にしておく必要がないため、省電力モード(Power Save Mode)を適用することができる。何かしらの変化点が起きるまで眠っておき、変化点が起きた時点で自律制御で立ち上がって、データを送ればいいからだ。これによって電池2本で10年保つIoTデバイスができる。電源が不要になるということは、IoTデバイスの設置場所を選ばないということだ。
加えて、従来のスマートフォンで使用しているLTEと比べ、LPWAでは基地局から今の3倍の距離までカバーできるようになると言われている。通話はリアルタイムでデータを飛ばさないと音声が途切れてしまうが、IoTデバイスから発するデータは複数回同じデータを送信しておき、後でつなぎ合わせるというカバレッジ拡張の技術を用いることができる。つまり、非居住地や地下室など、弱電界にもIoTデバイスを置ける範囲が広がるということである。
最後のコスト削減に寄与した要因は、LPWAは通信速度が低速であるため、通信料を下げられること、そしてスマートフォンのような高性能かつ大容量なCPUやメモリにする必要がないため、部品を削減して回路も簡素化することで、物理的な通信モジュールのコストを抑えることができるといった点になる。

この三拍子そろったLPWAは、まさにIoTに最適なネットワークと言える。LPWAの中にも複数種類があり、(LTE)Cat-M1・(LTE)NB-IoT・LoRa・SIGFOXをKDDIではサポートする。このうち、前者2つのセルラー周波数を利用する「セルラーLPWA」は、2017年度に提供開始する予定だ。
――LPWAに関心はあるが、本当に自社のビジネスに活かせるのか不安視している企業も多いのではないか。
そんなお客さまに向けて「LoRa PoCキット」というものを用意している。LoRaデバイス10台、LoRaゲートウェイ、6カ月分の通信費など、LoRaの検証に必要なシステム一式を6カ月120万円(税別)で提供する形だ。
LoRaの基地局であるゲートウェイそのものをお渡しするので、用途に合わせてどこでもLoRaエリアを作ることができる。PCサイズの可搬型なので、さまざまな場所で期間中に何度でも試用していただける。
明電舎と共同で「LoRa PoCキット」を活用した浸水監視の実証実験も3月より開始する。マンホールに設置したセンサーで、下水道の内水氾濫を監視するとともに、降雨レーダー情報と連携することで、ゲリラ豪雨などに的確に備える都市水害対策を支援していく。
このようにKDDIでは、IoTに必要なデバイス領域・回線領域・クラウド領域のあらゆるレイヤーで差別化を図っていく。お客さまが得意な分野は自社のリソースで進めていただき、そうでないところをKDDIが行う、といった“いい所取り”をしてもらえれば、と考えている。
>>KDDI 法人・ビジネス向けの「IoTソリューション」
http://www.kddi.com/business/mobile/m2m-solution/