
自分のことを知らずにキャリアはイメージできない
ビジネスパーソンなら、一度はキャリアについて、今後の人生について考えたことがあるだろう。
実際、グロービス経営大学院(以下、グロービス)で教鞭を執る村尾佳子教授は「10年以上、グロービスでビジネスパーソンのキャリアに向き合ってきました。ここで学ぶ方は能力開発に積極的な方ばかりなので、最終的に満足いくキャリアを築き上げる方が多いのは事実です。しかしそのような方々でも、4人に1人は自分のキャリアに悩み続けていると実感しています」と語る。
社会全般では、望んだキャリアを築けないまま、もしくはキャリア構築をほとんど意識しないまま多くの時間を過ごしてしまっているケースがかなり多いのではなかろうか。
それでも、これまでは年功序列という日本独特の慣習があったこともあり、まじめに仕事さえしていれば失職するリスクは高くはなく、キャリアについて悩む機会もなく仕事人生を終えることもできた。しかし、これだけ企業間の競争が激化する中では、「自分が何を望んでいるのか?」「自分にとってベストなキャリアとは何か?」を真剣に考えておかなければ、環境の変化に翻弄され続けて人生を終えてしまうだろう。
人生の大半の時間を投じる仕事をどうとらえるかによって、人生は大きく変わる。特に女性の場合は、出産で仕事と人生が大きく変わる可能性が高い。少しでも早い段階で戦略的にキャリアをどう築くのかを考えることが、成功の鍵となる。
では、満足のいくキャリアをつかむ人と、つかめない人の違いは何なのだろうか。
満足いくキャリアをつかむ人、つかめない人の違いとは?

村尾教授は「うまくいく人は、自分のことをよくわかっている人です」と言う。
自分を大切にしている人は、他者との比較の中で自分の価値観や能力を知ろうとしている人が多い。たとえば、同じ会社や社外の「デキる」人と交流したり、世代を超えてキャリアについて真剣にディスカッションしたりする。積極的な周囲とのコミュニケーションによって自分を理解し、結果的に満足のいくキャリアを築くことにつながっていく。
また、村尾教授は「外部環境の変化をしっかり把握していることも大事ですね」と語る。自分が今携わっている仕事は市場においてどんな価値があるのか。その価値を向上させるために自らの仕事や能力をどう改善すべきか。環境の変化と自分の仕事や能力を常に紐付けて考えることが重要だ。
キャリアや人生に対する価値観は、出会う人や仕事のステージによって変わっていく。だからこそ、どんなに忙しくても定期的に立ち止まって「今、自分は何を大切に思っているのか?」と問い続けていくことが必要だ。「自分のことは、自分にしかわかりません。満足のいくキャリアや人生を送るためには、真剣に自分と向き合う機会が絶対に必要なのです」と村尾教授は語る。
しかし、そこで描いたキャリアを実現させるにはどうしたらよいのだろうか。
自分の可能性にふたをせず、学ぶ姿勢を持ち続ける

現在の労働市場においては、20代はポテンシャルそのものが、30代になるとマネジメント能力と実績というように、ステージに応じて求められるものが変化している。自身の年齢と保有スキルとを照らし合わせ、足りないスキルについては素直に認める。自分の可能性にふたをせず、常に前向きに学ぶ姿勢を持ち続けることが大切だ。
たとえば、グロービスの授業のひとつ『マーケティング・経営戦略基礎』では環境を分析するためのフレームワークを学ぶ。というのも、キャリアを考える上では、刻々と変わっていく外部環境に理解が欠かせないからだ。さらに外部環境を意識しながら戦略を立てるためには、フレームワークの理解はもちろんのこと論理思考力も重要だ。これらの力は、意識して鍛えてこそ伸びるもので、ただ書籍を読み、頭で理解しただけでは、決して未来や将来の方向性を考えるレベルに至らない。
だからこそ、グロービスではビジネスの場面を疑似体験しながら、教員や学生と議論を重ねる。議論の中で何度もフレームワークを使い分析することで無意識に使えるレベルにまで持っていくのだという。
次世代リーダーが持つべきは未来を示せる力と愛情

グローバル化と叫ばれて久しい。その進展に伴い求められるリーダー像、資質とはどのようなものなのか。村尾教授は「コミュニケーション力、多くの異なる文化や宗教、価値観や前提を持った人々をマネジメントする力。そして、大前提として、やはり英語力は必要。でもそれ以上に次世代のリーダーたちには、『未来を示せる力』と『人に対する愛情』を持ち続けてもらいたいと思っています」と語る。
未来を示すには、情報収集力と、情報をさばくための論理的思考力が必要だ。 また、人は最初は己のために動くが、最終的には「世のため人のために尽くしたい」という思いが湧き上がってくると村尾教授は話す。「その思いが湧き上がったとき、人間はとてつもない力を発揮します。だからこそ、リーダーには常日頃から人に愛情を持ち、他者の可能性を信じられる人間であって欲しいですね」。
“そこそこ”稼いで、“そこそこ”のポジションで、“そこそこ”に趣味も楽しむ・・・。そんな人生ももちろん、あるだろう。しかし、一度きりしかない人生、思いっきりチャレンジし、死ぬまで成長し続け、周囲の人のために貢献する人生を歩んだほうが楽しいのではないか。10年後に後悔しないためにも、自身のキャリアに真剣に向き合う機会を持つ――仲間と共に学び成長できる場、それがグロービスなのだ。
