アナリティクスで経営革新を
多くの企業は、情報を活用して経営の意思決定に役立てようと、努力してきた。一つの例が "見える化" である。しかし、それは過去を見えるようにしているに過ぎない。「たとえば、過ぎゆく風景を小さなバックミラーだけで見ながら、車を運転しているようなもの」と指摘するのはSAS Institute Japan(SAS)の吉田仁志社長。「アナリティクスはデータから、これから起きる可能性を何通りかのシナリオとして予測し、多くの選択肢を提供できます。つまり、ハンドルを握る経営者にこれから進むその先の風景を見せてあげることができるのです」と語る。
アナリティクスで組織を考える集団に
たとえば、販売戦略を議論する際、保有しているデータにアナリティクスのメスを入れることで、将来のマーケット像や顧客の本当の姿が立体的に立ち上がってくる。なぜか。
「私どものSAS Visual Analyticsを例にあげましょう」と吉田社長。「ある商品の売り上げについて、色が違ったら、価格を下げたら、天候が雨だったらなど、あらゆる条件の組み合わせでシミュレーションを行うことができます。しかも、導き出されたシナリオはグラフやチャートでビジュアル化されているため、把握に時間はかかりません。また、顧客のプロフィールという視点からアナリティクスを加えれば、対象となる顧客一人ひとりの行動が予測され、それぞれに最適なアプローチを選択できます」。
さらに、考えるきっかけを与える、という役割も重要だ。
「多くの企業組織は考えることを忘れているのではないでしょうか。言われたことを言われたとおりにこなす、という風潮が強まる中で、それぞれの現場でも、ある条件を変えると、どのように市場が、顧客が変化するのかなど、さまざまな視点から予測を立てる。そして行動する。さらには、それをリアルタイムでできたら……。アナリティクスを活用することによって、組織を考える集団へと変えることができるのです」。
アナリティクスによってさまざまな予測を導き出し、トライ&エラーを繰り返すことで、それまで思いもつかなかった風景が現れる。実際に最適だと判断した予測が現実の成果につながることを実感できれば、現場レベルでも主体的に考えることが習慣となり、ビジネスのスピードも速くなっていくはずだ。
SASがSAS Visual Analyticsのような革新的なソリューションを実現できる理由は、その生い立ちに求めることができる。「1976年の創業以来、アナリティクスに特化した存在として、毎年、売上高の約25%を研究開発に投資してきました。実際、マーケティングから経営管理、サプライチェーン最適化、リスク管理にいたる幅広い経営課題をカバーするアナリティクスのモジュールを開発しており、金融、流通、製造、医薬、官公庁など業種別に特化したモジュールを用意しています」。
膨大なデータをコストとするのか、そこから価値を創出するのか、ビッグデータ時代の到来は経営者に大きな判断を迫っている。今こそ、データオリエンテッドな組織に変革していくタイミングにあるのではないだろうか。