経費の「見える化」はいかに達成されたか 豫洲短板産業が進める改革とは
海外営業による出張が増え、
経費精算の手間が著しく増大
常時1万点を超えるストックを揃え、即納体制で小口顧客の多様な要望に迅速に応える同社。「ステンレス鋼材なら豫洲短板産業」と、国内の顧客からの信頼は絶大だが、それに甘んじることなくさらなる販路拡大を目指し、約5年前からグローバル展開を進めている。2010年に中国・上海に子会社を設立したのを手はじめに、タイのバンコク、ベトナムのホーチミンと3カ所に海外拠点を設立。海外に積極的に進出する中で、社員の海外出張が著しく増えたことが、コーポレート・カードの導入を考えるきっかけだった。
「それまで社員が出張する際の航空機や鉄道、宿泊先の手配は、総務部門が一手に引き受けていました。しかし海外に出張する社員やその頻度が増大したことにより、その手配に時間をとられ、しばしば他の業務が滞るようになったのです」。森晋吾代表取締役社長は、当時の悩みをこう打ち明けた。
総務の業務を減らすために出張の手配や精算を各社員に委ねたところ、今度は別の課題が生じてしまう。
「出張の際、社員は個人所有のクレジットカードや現金で旅費や宿泊代金を支払い、出張後に経費明細と領収書を総務に提出するのが決まりでした。しかし明細書の作成に時間がかかる上に、クレジットカード会社から発行される明細書には個人的な購入履歴も記載されています。こうした煩わしさを解消できないかと頭を悩ませていました」
そのため同社では複数のカード会社のサービスを検討。最終的にアメリカン・エキスプレスのコーポレート・カードにJR東海エクスプレス予約の機能がプラスされた「アメリカン・エキスプレス(R)・JR東海エクスプレス・コーポレート・カード」の導入を決めた。決め手の一つになったのは、コーポレート・カードと同時に導入した「コーポレート・メンバーシップ・リワード(R)・プログラム」だ。各カードの支払いで獲得したポイントを企業単位で貯められるアメリカン・エキスプレス独自のプログラムを、柴田宏樹執行役員・総務部長はこう評価する。
「魅力的だったのは、獲得したポイントを経費の支払いに充てられることです。カード利用代金の支払いにポイントを充てられれば、経費削減につながります。有効期限もないので、ゆっくり貯めて社員旅行など全社員のために役立てようと考えています」
管理業務が効率化され、ストレスも低減
もちろん当初期待していた出張手配や精算の手間の削減でも大きな利点が得られている。コーポレート・カードに国内・海外の旅行傷害保険が付帯しているため、海外出張のたびに社員一人ひとりが旅行傷害保険に入る必要がなくなった。加えて、JR東海道・山陽新幹線の座席の予約や変更、精算もコーポレート・カード1枚で事足りるようになり、国内出張の際の手配のストレスも低減している。
現在、コーポレート・カードを使用しているのは、経費を使う頻度の高い管理職以上の約10名。「手配や精算がずいぶん楽になった」と社員の満足度は高い。こうした効果を見て同社では今後、特に海外出張の多い営業担当者を中心にカードの配布数を増やしていくことも計画している。
一方、カードを使う社員だけでなく、経費を管理する総務部門においてもコーポレート・カードの導入によって業務の効率化が図られている。それに役立っているのが、WEB上で分析用レポートを作成する「@ Work」のサービスだ。これにより、各社員の利用明細を一目で確認、管理できるだけでなく、いつどこで経費を使ったのか、時系列で使用状況を可視化できる。
「お金の流れを把握できるので透明性が高まり、ガバナンスの強化に役立っています。カードを使用してから48時間後にはその履歴を確認できるというスピードも、『@ Work』の魅力の一つ。海外出張は1、2週間に及ぶことも少なくありません。その間のカードの使用履歴は、社員の安全を確かめる手だてとしても有効です」と柴田執行役員は語る。
さらなる事業拡大に向け、「提案力」にも期待
豫洲短板産業は、海外への卸売りを今後さらに増やしていくことに加え、中国で火力発電所向けの新規事業に関わるなど、分野を問わず、事業の拡大を図っていく考えだ。そうした中で同社がアメリカン・エキスプレスに期待するのは、その「提案力」。海外との取引が増えるにつれ、同社は数年前から仕入れや支払いなどでのB to Bでのカードの活用を視野に入れてきた。
「当社の構想に対して発展的な提案をしてくれたのがアメリカン・エキスプレスでした。コーポレート・カードのメリットだけでなく、当社の販路開拓や新しいビジネスの創出にも一緒になって取り組んでもらえるのはありがたい。これからもサポートしていただけたらと考えています」と森社長の期待は高い。
ガバナンスを強化して企業体質を堅固なものにすることは、グローバル企業の必須条件でもある。グローバル市場でのさらなる事業拡大に弾みをつけるためにも、アメリカン・エキスプレスのサービスは同社にとってますます重要なものとなるに違いない。
豫洲短板産業株式会社
1933年に愛媛県で機械工具などを販売する金物店として創業。1960年代より産業機器や自動車などに用いられるステンレスやチタンといった特殊金属を専門に扱う商社として成長を遂げてきた。国内外の鉄鋼メーカーとの強固なパイプによる豊富なラインアップと、自動倉庫やITシステムによる小口短納期で強みを発揮する。約5年前からアジアを中心にグローバル展開を開始。各国のニーズに応じたステンレス鋼材の卸売りだけでなく、プラント事業など新規事業の開拓にも取り組んでいる。
~『中堅企業調査レポート2016』の結果から~
※年間の売上規模が約5億円以上、250億円未満の企業