
【基調講演】
国税関係書類の電子帳簿保存
電子帳簿保存法の全体像と改正内容のポイント
取締役専務 TOMAコンサルタンツグループ部長
持木 健太氏
TOMAシステムコンサルタンツの持木健太氏は、電子帳簿保存法の概要や同法が施行された背景、承認申請の手続きについて解説した。
電子帳簿保存法の正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存等の特例に関する法律」。ITが浸透し、会計処理の分野もITを活用した帳簿書類の作成が普及しており、納税者が帳簿書類を保存する負担を軽減するために1998年7月に施行された。2005年からはスキャナ保存制度が導入され利便性の向上が期待されたが、保存の対象とされる契約書や領収書に金額の制限があるなど導入要件が厳しかったため、多くの企業では普及が進まなかったという。そこで15年より要件を緩和し金額の制限を撤廃、16年からはスマートフォンやデジタルカメラなどの機器による読み取りも認められるようになった。
電子帳簿保存法の手続きは「電子化する証憑の決定」「文書管理規程や電子化手順書等のドキュメント用意」「e‐文書対応機器の準備」「所轄の税務署に申請書を提出」「スキャナ保存の開始」という五つのステップで構成される。スキャナ保存導入にあたっては受領と入力、チェックをそれぞれ別の者が行う「適正事務処理要件」や、一定水準以上の解像度による読み取りなどを機器に求める「電子計算機処理システムの要件」などの要件が設けられており、適切な体制を構築することが必要となる。こうした体制の準備には専門的な知識が必要となり、電子帳簿保存法に精通した専門家の支援を受けることでスムーズな導入が可能になる。
これまで紙の証憑管理に要していた時間や労力はほかの業務にあてることが可能になり、企業の生産性も向上する。電子保存導入のメリットを活用することで「企業経営をこれまで以上に強固なものにしてほしい」と持木氏は強調した。
【テーマ講演】
電子帳簿保存法改定で
経費精算業務はどう変わる?
クラウド事業本部
ファイナンス・クラウド事業部長
本松 慎一郎氏
ラクスの本松慎一郎氏は同社の提供するシステムを導入することによって経費精算業務フローがどのように変化するか、また導入によってどのようなメリットが生まれるか実演を交えながら解説した。
ラクスではウェブ帳票発行システムの「楽楽明細」やウェブデータベース「働くDB」など企業の業務効率化を実現するさまざまなクラウド型サービスを展開している。そのうち電子帳簿保存法に関連するのが、交通費・経費精算システム「楽楽精算」だ。
「楽楽精算」による電子帳簿保存法の活用により、企業の経理担当者は、さまざまなメリットを実感できるという。
まず、領収書を電子データとして管理するメリットとして三つ挙げられる。一つ目は承認・確認処理の迅速化。原本ではなく領収書の画像で確認できるため、距離が離れていても承認・確認ができ、早く処理できるようになる。二つ目は早期払い戻しの実現。業務が迅速化することで、払い戻しのタイミングも早めることができる。三つ目は検索性向上による監査対応の効率化。電子データ化されることで領収書データを素早く探せるようになり、監査対応前に焦って原本を整理する必要がない。
また、領収書をペーパーレス化することで実感するメリットもある。領収書を支店から本店に郵送する必要がなくなるため、領収書原本の取り扱い工数が削減されたり、ファイリングの手間や保管スペースが不要になるため、原本の保管関連コストが不要になるといった点などだ。
すでに、約1400社が「楽楽精算」を導入。「さらに電子帳簿保存法対応版もリリースを予定している。これによって『楽楽精算』の利便性、満足度が向上していきます」と本松氏は締めくくった。
【特別講演】
新しい時代における経理部門のミッション
明治大学専門職大学院特任教授(管理会計)
林 總氏
林總氏は財務諸表の問題点を指摘し、経理部門のミッションや必要な視点、そして目指すべき経理業務システムについて自身の考えを力説した。
林氏は冒頭で「利益が出ていても倒産し、債務超過なのにつぶれない企業があるのはなぜか」と問いかけ、利益と儲けの間に横たわる問題を語った。経営の目的は言うまでもなく利益を増やすことだ。そして会計上の利益とは売り上げと費用の差額概念にすぎない。このことが利益と儲けのねじれを招き、経営のかじ取りを誤る原因にもなると指摘。すなわち事業の目標として利益を強調することは、利益操作を助長し、研究開発や設備投資を控えることにつながり、事業の存続を危うくするまでに経営判断を誤らせる。林氏は経営者にとっての第一の責任は会社を存続することであり、そのために「儲け」すなわち、新たな現金を獲得し続けることだと語る。
また、林氏は現代の経理部門の仕事が財務会計と税務会計に偏りすぎており、管理会計がなおざりにされていると指摘する。経理部門は経営参謀でなければいけない。すなわち、ビジネスプロセス全体の活動情報を経営者に提供するとともに、経営者と共に各部門の活動を統制して会社全体の利益を最大にすることが経理部門の果たすべき使命であると解説した。
最後に林氏は、目指すべき会計システムとして「ビジネスプロセスでの付加価値活動がわかること」「異常が生じたらその発生源にさかのぼれること」「個別企業における付加価値活動だけでなく、グループ全体の価値連鎖が可視化できること」を挙げた。そうしたシステムを構築するためにも、経理業務システムの構築を情報システム部門や外部ベンダーに丸投げすることなく、経理部門が主体となってシステム化を進めていく必要があることを伝えた。