「ネット記事=共有財産」説は、超ムリ筋だ 「コピペ」と「引用」…著作権侵害の境界線
著作物をウェブ上で公開する際、著作者が「誰でも使っていいですよ。コピペも大歓迎!」と包括的に許可することは可能です。実際に、クリエイティブ・コモンズという団体が提供している「CCライセンス」は、作品を公開する作者が「この条件を守れば、私の作品を自由に使ってかまいません」という意思表示をするためのツールとして活用されています。
しかし、裏を返せば、そのような意思表示がないかぎり、ネット上で公開された著作物であっても、他人が自由に使うことはできないのが原則です。仮に、著作権者に経済的損害がまったく発生していなくても、だからといって著作権侵害が成立しないことになりません。
コピペは「引用」にあたるか?
日本の著作権法には、米国著作権法のフェアユース条項のような包括的な権利制限規定(一定の例外的な場合に著作権を制限して、著作権者に許諾を得ることなく利用できることを定める規定)はありませんから、「ネット記事のコピペ」が正々堂々と認められるためには、いずれかの権利制限規定の要件に該当しなければなりません。
今回のケースのような場合、使える可能性が高い規定は引用(著作権法32条1項)です。
著作権法上の「引用」に該当するためには、(1)公表された著作物を使用していること、(2)「公正な慣行」に合致すること(3)報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内でおこなわれること、が必要とされています。
そのほか、過去の裁判例では、(4)主従性(自己の著作物が「主」であり、引用された著作物が「従」であること)や、(5)明瞭区分性(引用部分が明瞭に区別されていること)が必要とされてきました。また、引用の必要がない場合には引用は許されない、として(6 )引用の必然性も要件であると言われてきました。
知財高裁は、美術鑑定書事件(平成22年10月13日判決)において、『引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり、かつ、引用の目的との関係で正当な範囲内、すなわち、社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要』と述べたうえで、引用の成否を判断するにあたり(a)利用の目的、(b)方法、(c)態様、(d)利用される著作物の種類や性質、(e)利用される著作物の著作権者におよぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない、と判示しました。
この判断手法は、今後のスタンダードになっていく可能性が高いと思われます。