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BELS、始まる 省エネ性能の高い建物は地球にも財布にもカラダにも優しい

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これまで冷蔵庫やエアコンなど、家電の省エネ性能が喧伝されることはあっても、住宅のそれが声高に主張されることはなかった。「住宅に省エネ?」と思う人もいるだろう。だが、そんな状況も徐々に変わるかもしれない。BELS(ベルス)という第三者認証制度がスタートしているからだ。BELSとは何か、そしてBELSがもたらす未来とは―。

省エネ住宅は健康リスクを下げる

BELSの正式名称は「Building- Housing Energy-efficiency Labeling System」。申請者(建築主、建築物の所有者)が第三者評価機関に依頼して、建物の省エネルギー性能を評価・表示するもので、2014年4月から運用を開始(住宅については16年4月から運用を開始)している。

この制度は、実は国内のエネルギー事情にも密接にリンクしている。政府は15年に、「気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」においてCO2の排出量を30年度までに26%削減(13年比)するという目標を国際社会に宣言した。この"公約"実現のためには、エネルギー消費量の削減が必要不可欠であり、それには建築物の省エネ化と、その取り組みの一つとしてBELSも重要な役割を担っている。なぜなら、1990年から2013年にかけて、産業部門と運輸部門におけるエネルギー消費量が減少する中、民生部門(業務・家庭)が34%増と著しく増加しており、現在では全エネルギー消費量の3分の1を占めているからだ(出所:国土交通省)。

国土交通省
川田 昌樹

国交省の川田昌樹氏はBELS等の建物の省エネ性能の表示制度によって、まずは「エネルギー消費の見える化」を推し進めたいと語る。

「これまで住宅の省エネが普及しなかった理由のひとつに、表示制度が普及していなかったことが挙げられます。自動車が燃費によって選ばれているように、住宅でもBELS等によって省エネ性能を明らかにすることで、消費者がエネルギー消費の少ない物件を選択できる環境を整備していきたい。国交省としてもそのための取り組みを進めていく方針です」(川田氏)

国交省ではBELS等の普及を進めるため、さまざまな形で支援を行っている。たとえば「BELS評価機関に対する評価支援事業」では評価に必要となる費用を補助することで利用者のコストを削減。また、既存の住宅・建築物については、省エネ性能の診断・表示にかかる費用を支援している。そうすることで省エネ住宅・建築物の普及を進め、国内のエネルギー消費量を抑えていこうという狙いだ。

近畿大学建築学部 学部長
岩前 篤教授

省エネ住宅のメリットは、環境に優しいことや光熱費の削減にとどまらず、そこに住む人のカラダにも好影響を及ぼす。住宅の断熱性・気密性について長年研究を続けている近畿大学建築学部の学部長・岩前篤教授は、断熱性能の向上は「さまざまな健康上のリスクを抑えることにつながる」と語る。

「冬場の入浴時に、ヒートショックによって命を落とすケースが後を絶ちませんが、これは何も入浴時だけに限りません。冬場の暖房が行き届いた部屋と、そうではない廊下の温度差は15℃にもなります。そのためトイレに行こうとして急激な温度差にさらされ、心臓発作や脳卒中を引き起こすヒートショックの被害が多数報告されています。だからといって、ヒートショックを防ぐためにと一日中全ての部屋で暖房をつけているのは現実的ではなく、いかに住まいの断熱性を高めるかが人体への影響を考えるうえでもとても大切になるのです」

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