より効率的で快適な出張術とは いつでもどこでも「仕事モード」に

1980年、神奈川生まれ。東京大学経済学部経営学科中退。在学中から複数のNPOの立ち上げ・IT企業の経営を経て、2004年にオトバンクを創業し、現職。著書に『ノマド出張仕事術』(実業之日本社)、『20代でムダな失敗をしないための「逆転思考」』(日本経済新聞出版社)などがある
―上田さんは、オーディオブックの配信サービスでは国内最大級の「FeBe(フィービー)」を運営するオトバンクを2004年に創業されました。出張も頻繁にされるとのことですが、どのような目的での出張が多いのですか。
上田 オトバンクを創業するきっかけは、本を読むのが大好きだった祖父が緑内障で失明し、それがかなわなくなってしまったのを助けたいという思いでした。視覚障害者や高齢者など目が不自由な人たちにとってバリアフリーになるものを提供したいと考えたのです。
オーディオブックは「耳で読む本」とも呼ばれます。しかし、単に文字を音声にすればいいというものではありません。たとえば、ヒット作品の一つ『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』(ダイヤモンド社)は、対話形式になっています。感情的なセリフも少なくありません。ナレーター(声優)の人選のほか、感情表現などを一つひとつ作り込んでいくことが必要です。まさに演出であり、朗読劇を作るようなものです。
文芸作品であればさらに登場人物も多くなります。声優の配役に合わせた企画やプロモーションなども立案し実行しなければなりません。出版社や著者との打ち合わせも大変頻繁に行っています。
このほか、さまざまなコンテンツメーカーを開拓したり、私自身がいろいろな人や企業の話を伺いに行ったりしています。会社にいることよりも、外を飛び回っているほうが多いかもしれません。
―上田さんの著書『ノマド出張仕事術』では、あらゆる場所を仕事場にするノウハウが書かれています。ポイントをいくつかご紹介ください。
上田 大切なのは、いつでもどこでも、会社のデスクと同じように仕事ができる環境を整えることです。
たとえば私は、デスク上のツールの定位置も決めています。ノートパソコンを目の前に、右には飲み物、左には外した腕時計とスマートフォンを置くのです。これは、会社のデスクだけでなく、飛行機や新幹線に乗ったときでもカフェでも同じです。
BGMも決めていて、仕事中は、スマートフォンに入れたクラシック音楽を聴いています。ツールを定位置に置き、ノートパソコンを立ち上げると、すぐに仕事モードに入ることができます。
ちなみに、技術的な話になりますが、ノートパソコンの起動時間を速くするために、ハードディスクをSSD(ソリッド・ステート・ドライブ:USBメモリーのように内蔵しているメモリーチップにデータを読み書きする。高速で静音性に優れる)に交換しています。5分のすき間時間があれば、すぐに仕事ができます。
快適環境のために交通機関の座席にもこだわる
―いつでもどこでも、会社のオフィスと同じように仕事ができる環境を作るためには、どのような準備が必要なのでしょうか。
上田 私自身は、大げさでなく、「今からすぐに出張に出なければならない」といったことが起こっても慌てることはありません。特別な準備をしなくても、いつもと同じようにノートパソコンとスマートフォン、充電器だけを持って出れば、ほとんどの仕事に対応することができます。準備の時間がなければ、着替えなどは現地で調達すればいいのです。
出張の際に、インターネット接続や紙の資料の用意などを心配する人も多いと思います。
まずインターネット接続について、私も以前はポータブルWi︱Fiを持ち歩いていましたが、現在はスマートフォンのテザリング機能(スマートフォンをアクセスポイント《親機》としてインターネットに接続する機能)を利用しています。最近は飛行機や新幹線の中でも、インターネット接続サービスが使えるようになったので便利です。