世界基準、そして、ものづくり基準 文化服装学院
卒業生に、山本耀司、高田賢三、渡辺淳弥、丸山敬太、コシノジュンコやコシノヒロコ、NIGO、ツモリチサト、宮前義之といった、世界的に有名なデザイナーを数多く輩出している。あらゆるファッションのいち時代を作り上げる人材を育成してきた同校の魅力は、根底に流れるものづくりの精神だった。
◎学部・コース I部〈服飾専門課程、ファッション工科専門過程、ファッション流通専門課程、ファッション工芸専門過程〉II部(夜間)〈服飾専門課程、ファッション流通専門課程〉※詳細は同校HPにて ◎在校生数 3500名(2016年6月) ◎主な就職先(2016年3月卒) アーバンリサーチ アダストリア アッシュ・ペー・フランス アニエスベージャパン アンダーカバー イッセイミヤケ イトキン エイ・ネット オンワード樫山 ゴールドウイン コム・デ・ギャルソン サマンサタバサジャパンリミテッド ザラ・ジャパン サンエー・インターナショナル 三陽商会 ジュンアシダ ジョルジオ・アルマーニ・ジャパン 高島屋 土屋鞄製造所 東京衣裳 ナルミヤ・インターナショナル ビームス ファイブフォックス ベイクルーズ 三越伊勢丹 ユナイテッドアローズ ユニクロ ヨウジヤマモト リンク・セオリー・ジャパン レナウン ワコール等
日本のファッション界の土台
今年、創立93周年を迎えた日本初の服飾専門学校「文化服装学院」。第一次世界大戦直後の東京・青山にて、洋裁技術の普及のために開かれた洋裁学校がその前身である。1923年には国内初の服飾専門学校として国から認可され、以来、日本の産業やファッション業界と密接に歩んできた。
長い歴史のなかで、これまで30万人におよぶ卒業生をファッション業界に送り出し、世界的に有名な日本を代表するデザイナーを数多く輩出。海外のファッションサイト「Fashionista」のファッション・スクールベスト50では、世界の名だたるデザイナーを輩出した有名校とともにトップ3の座に、続いてイギリスのファッションビジネスメディア「ビジネスオブファッション(BoF)」が発表したランキングでは世界第2位(2015年)に輝いた。
モノづくりをベースに置いたカリキュラム
では、同校が世界基準で評価される要因はなにか? ひとつは、パリコレクションに参加するようなグローバルブランドを手がけた卒業生を多数輩出していること。そして、モノづくりを中心に置いた授業スタイルであることだ。
同校では、ビジネス系のクラスやテキスタイル関連のクラスでも、基礎学年では服作りの理論を必修カリキュラムにしている。まずモノづくりを学んだうえで、コンセプトやデザインを学ぶ授業を展開しているのだ。
これは、モノを作ったことがなければファッションを仕事にできない、という教育理念にもとづいたものでテキストも同校オリジナル。逆に、海外で評価されるファッションスクールの多くは、自分が選んだコースは最初からコンセプトやデザインに特化したカリキュラムが大半であり、同校との大きな違いでもある。
モノづくりに重点を置く同校の教育方針は、現在のあらゆる産業やファッション業界において、また、さまざまな企画やアイテムを生み出すうえで、大きな底力となっている。
一歩踏み込んだカリキュラムも特徴だ。人体に関する知識、服装史、素材に関する知識などが学べるファッション関連授業も充実。就職すれば、専門性の高い仕事に就くケースが多いため、在学中にトータルでファッションについての視野を広げる必要があるという教育理念がそこにある。
ほかにも、ファッションショーやさまざまな講演会が開かれる大ホール、世界中の服飾関連の資料本32万冊がそろう図書館、服飾博物館やリソースセンター、多くのファッション好きを捕まえて放さない「装苑」を発行する文化出版局、日本で唯一のファッション専門職大学院、文化ファッション大学院大学を持つなど、教育と、その派生すべてを網羅した専門学校の枠を超えるファッション学の聖地と言えるだろう。
常に海外への視野を持つ
国内にとどまらず、海外留学支援に力を入れているのも同校の特色だ。そのひとつが、アートスクールとしてはイギリス最古のノッティンガム・トレント大学のアート&デザイン学部への留学/奨学金プログラム。そして2009年には、イギリスのセントラル・セントマーティンズ・カレッジ、アメリカ・ニューヨーク州立ファッション工科大学をはじめとする世界23カ国45校による、「国際ファッション工科大学連盟」(IFFTI)に国内で唯一加盟。IFFTIの会長校にも選ばれている。
現在は、こうした動きからも、アジアを中心に海外からの留学生が増え、インターナショナルな雰囲気でファッションを学べる環境といえるだろう。
これまで30万人の卒業生を送り出してきた実績から、業界からの信頼も厚い同校。さらに、30万人の卒業生ネットワークが就職を有利にしてくれるのは言うまでもない。また、ファッション業界とひと口にいっても、役割はさまざまだ。デザイナーやプレス、スタイリストといったファションの表舞台だけではない。ブランドを裏側から支えるバタンナーやマーチャンダイザー、生産管理といった職種にいたるまで、ファッション業界のあらゆる役割をカバーする教育が、同校の学科やコースに用意されている。
近年、日本の和食やアニメなどのジャパニーズカルチャーが世界から注目されているが、ファッションもそのひとつだ。今後も、日本の“クール”、“かわいい”を世界に発信する新しい感性が、ここ日本を代表する服飾専門学校「文化服装学院」から飛び出すことを期待したい。