ハイブランドが欲するその技術はここで生まれる ヒコ・みづのジュエリーカレッジ ウォッチコース
◎学部・コース ウォッチメーカーコース(2年制)、ウォッチメーカーマスターコース(3年制) ◎在校生数 145名(2016年6月) ◎主な就職先(2016年3月卒) リシュモンジャパン、パテック フィリップ ジャパン、ブルガリジャパン、ワールド通商、オーデマ ピゲジャパン、セイコーサービスセンター、シチズンカスタマーサービス他多数
圧倒的なブランド力を持つ学校
ヒコ・みづのジュエリーカレッジのウォッチコースが開講した1990年の終わり。気づけば、輸入時計を扱える技術者の高齢化が進んでいた。特に深刻だったのは「機械式」時計の調整ができる職人が不足していたことだった。そんな状況を憂いた輸入時計の業界団体「日本時計輸入協会」の働きかけにより開講したのが、時計職人を育成するウォッチコースだ。開講以来20年間、時計業界へ1000人以上もの卒業生を送り出してきた。
その実績から、1998年より毎年、日本時計輸入協会の会員企業の技術者向けの教育を同校が担当している。そうした業界との太いパイプがある「業界認定校」であるため、過去10年間の平均就職率は95%と高水準だ。(2016年3月実績は100%)
コースは、2年制のウォッチメーカーコース、3年制のウォッチメーカーマスターコースを設置。
2年制は時計メーカーを目指すにあたって欠かせない技術や知識の習得を目指し、3年制はそれまでの応用として、クロノグラフといった複雑時計のマイスターを目指す内容だ。クラスは、時計の本場スイスの教育スタイルを踏襲し、少人数制を導入。質の高い時計技術が習得できる授業として、業界内外から高く評価されている。
レギュラーカリキュラムだけにとどまらず、世界を代表する名門時計企業の技術者を招いた講習会があるのは、最大の魅力のひとつだろう。たとえば、ブライトリング・ジャパンによる自社開発ムーブメントの講習会をはじめ、「グランドセイコー」「クレドール」を手掛ける盛岡セイコーの製造現場の見学会などが開催されている。
そして学生たちは、海外へその知見を広めるチャンスを持つ。
たとえば、世界の名門として名高いパテック フィリップや多数のハイブランドを持つリシュモングループとの提携による企業賞(奨学生研修制度)を設置。「パテック フィリップ賞」という人材育成プログラムは、スイス時計の最高峰ブランド、パテック フィリップが世界各国の選ばれた時計学校と提携して行なわれるもので、「リシュモン・アワード」は、高級宝飾品ブランドを傘下にもつリシュモン グループによる同様の研修制度だ。このように列記するだけでも、同校がいかに世界から認められているかが分かるだろう。
ちなみに、パテック フィリップ賞はアジアで唯一の提携校であり、受賞した学生はスイス本社に招待され2週間の研修を受け、リシュモン・アワードの受賞者は傘下の名門ブランドで、自社製ムーブメントを使用した本格的な研修を受講する。
さらに、上述のアワードを受賞した同校の学生は、いずれも主催側の傘下企業に就職する切符も手に入れていることも付記しておきたい。
ほかにも、数々の名門ブランドの企業やアトリエを訪問できるスイス研修旅行も用意されているし、世界最高峰の独立時計師フィリップ・デュフォー氏の工房訪問をするなど、時計づくりの深部にふれる機会があるのも同校の特色である。
「生涯の仕事」という矜持
時計師を養成する同コースが今、若い世代に注目されているのはなぜだろうか。時計師の仕事について、同校ウォッチコース教育顧問 石崎文夫さんは、次のように語る。「時計はその構造の精微さ、美しさもさることながら、我々のもっとも身近な、肌身のうえで人生の時を刻む特別なものです。時計に新たな生命を吹き込む時計師の仕事は、生涯をかけて付き合えるすばらしい仕事ではないでしょうか」。
卒業生は、上述したパテック フィリップを筆頭に、カルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガールクルトといった名門ブランドを有するリシュモングループほか、セイコーやシチズンなど、あらゆる時計メーカーへの就職実績がある。
また、卒業生のなかには、「独立時計師」として脚光を浴び、世界的に認められた菊野昌宏さんもいる。菊野さんは、同コースで3年間の専門課程を学んだ。卒業後に完成させた「不定時法腕時計(和時計)」が、国際的な組織「独立時計師アカデミー(AHCI)」に認められ、日本人初の会員となった。
究極の専門職ともいえる時計師の仕事。同コースで高い技術力を身に付け、巣立っていく若い世代。将来、毎年スイスで行なわれる世界的な時計の見本市「バーゼル フェア」で、世界をアッといわせる時計を生み出す源となるかもしれない。