主催:東洋経済新報社 協賛:リコージャパン

基調講演
ソーシャルテクノロジーの活用で企業内情報革命を起こす
~企業価値向上のためにコミュニケーションとどう取り組むべきか~
慶應義塾大学
政策・メディア研究科
特別招聘教授
「1994年から2014年までの20年間に日本の名目GDPはわずか5%ほどしか成長していない。だが同じ期間に米国のそれは約150%も伸びている。どうしてこれほどの差が開いたのか」。夏野氏はまず聴衆にそう問うた。そして今や日本はOECD加盟国の中でも生産性が最も低い国のグループに入っていると指摘し、「日本はITを生かし切れていない」と断じた。
IT革命とは、効率と検索とソーシャルの革命であり、それは複雑系的知識ネットワークを現実のものとし、個人の能力の最大化と多様化社会への変革を引き起こした。一方で第4のIT革命とも言うべきAI(人工知能)革命も始動している。昨年はついにAIの画像認識能力が人間を凌駕し、大きく流れが変わった。「だが、日本の社会や企業の多くはそうした変化に対応し切れていないのが現実だ。環境が変わったのに多くの企業は組織も仕事の仕方も変えていない。単一性を重視するために環境の変化に対応できない面がある。そうしたことがこの間の日本の停滞を招いたのではないだろうか」。
それでも「悲観論に終始するわけではない」と夏野氏。「豊富な資金力、教育水準の高さ、世界トップレベルのものづくりの技術とITインフラなど、日本は大きなポテンシャルを持っている。これからは、想像力と創造力を駆使して課題を発見し、新しい付加価値を創出できる人材こそが時代を担う。何か新しいものが出てきたときに過去の経験に照らし合わせてとりあえず使わないようにするのでは、日本の力はますます衰えていく。新しいものはとりあえず使ってみるという方向に転換し、できるところからシステムを変えていく。そうすれば日本はまだ伸びる余地があるし、世界をリードすることができる」と夏野氏は語った。
事例講演1
ソーシャルの活用でマーケティングが、経営が変わる。
~ライフネット生命とお客様が直接的な接点を持つソーシャルテクノロジーの導入と改善について~
ライフネット生命保険
営業本部 マーケティング部長
08年創業のライフネット生命保険は、ウェブ上で生命保険の見積もりから申し込みまで行えるモデルで実績を伸ばしてきた。さらに、生保は信頼が大事であるという認識から、企業理念への共感を広げ、コストをかけずに認知度を高め、ネットで保険を買うというモデルを浸透させるためにソーシャルテクノロジーをいち早く活用してきた、と同社の岩田氏は指摘。出口会長と岩瀬社長の2トップが自らソーシャルメディアで情報発信していることを紹介し、そのフォロワーが約9万人いることに触れ、「ゼロコストで9万人の方に一次情報を提供できている」とした。
また同社に対するつぶやきも検索し分析して、ファンづくりにつなげているという。そして、最近はソーシャルを通じて同社のことを知った顧客が増えていると明かし、「ソーシャルテクノロジーはネットを介していてもぬくもりのあるメッセージを伝えることができる。コミュニケーションが変わってきていると感じる」と語った。そのうえでソーシャルの活用でマーケティングや経営を変えるためには、ストーリーが感じられることや、正直にとにかく発信し続けることが大事だと結んだ。
事例講演2
経営戦略としてのワークスタイル変革におけるソーシャルテクノロジー活用の道のり
リコー 執行役員
コーポレート統括本部副本部長 ビジネスプロセス革新センター所長
リコーは22年前からコミュニケーションのグローバルな基盤づくりを目指して変革を進めてきた。ワークスタイルの変革を提案し、トップからボトムまでのフラットなオープンコミュニケーションを支える基盤の一つとしてSNSの導入も行ってきた。その過程で「変革を促すにはラインの外からの力が必要と判断し、若手と中堅中心の専任チームを発足させた」と石野氏は語った。
このとき、石野氏らは仕事の見直しで30%の工数削減という目標を設定。一例として、会議のための移動の無駄を減らすためにテレビ会議や電話会議を増やし、会議そのものの回数も減らした。さらに、課題はSNSやメールでリアルタイムに共有するようにすることなども実行した。こうしたことを、まず自組織で展開、先行事業部で展開、全社展開という3ステップで実施。今も試行錯誤しており、非常に苦労してきたが、工数削減の成果は上がっているとした。そして「SNSを導入すればよくなるのではなく、それをトリガーに仕事の仕方やマネジメント、価値観をどこまで変えられるかが重要」と指摘して話を終えた。
パネルディスカッション
ソーシャルテクノロジーがもたらす未来と現在の壁
ボッシュ 情報システム部門 エンタープライズ2.0 プロジェクトマネージャー
インプレスIT Leaders
編集主幹
- ●登壇者
- ボッシュ 情報システム部門 エンタープライズ2.0 プロジェクトマネージャー 一野忠男氏
- ライフネット生命保険 岩田慎一氏
- リコー 石野普之氏
- ●モデレーター
- インプレスIT Leaders編集主幹 田口 潤氏
ボッシュでは、グローバルで約75%の社員が社内SNSを使うことができるようになっている。同社の日本におけるビジネスのメインはBtoBだが、渋谷のオフィスにはカフェを開き、一般消費者が同社の情報に触れる機会を設け、オンラインとリアルのコミュニケーションをコラボさせている。またSNSを使い、4週間要していたプロジェクトの準備を6日間に短縮するなどのアウトプットも出している。トップマネジメントと社員が直接コミュニケーションできるコミュニティも立ち上げているなど、一野氏は同社の取り組みを説明した。
一方、リコーの石野氏は、「必要以上にやることをやめる、というのがキーワード」だとしたうえで、「中間管理職の意識を変え、仕事の仕方を変えないと会社は変わらない」と指摘。いろいろなコミュニケーションツールを、フェーズに応じて使い分けたり組み合わせたりすることも大事だと述べた。
ライフネット生命保険の岩田氏は、出口会長に対して20代の社員がソーシャルメディアを活用するように要望し、「経営者が自らやることがマーケティング上で大事。そうすれば必ずキラーツールになる」と語ったエピソードを紹介。出口会長が自ら体験した後、ほかの役員やミドル層にも指示したことで全社的に広がったと説明した。
こうした話を受けてモデレーターの田口氏は「企業も変化しないと生き残れない大変な時代」と指摘し、「SNSなどのコミュニケーションツールを導入すると、人による発信力の違いが可視化される。そこからさらに改革の努力を積み重ねていくことが必要だ」とまとめて、パネルディスカッションは終了した。
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