オムニチャネル戦略を支える、在庫・倉庫管理、物流プロセスの高度化とは
協賛:JDAソフトウェア・ジャパン
【オープニングスピーチ】
「顧客ロイヤリティを維持するためにオムニチャネルで大切なこと」
Manugistics、i2テクノロジーズ、RedPrairieを統合してきたJDAは、サプライチェーンを一気通貫で見られるソリューションをそろえ、世界の小売業、消費財メーカーそれぞれのリーディングカンパニー100社の約8割に採用されている実績を誇る。そのソリューション・スイートを紹介したJDAソフトウェア・ジャパン社長の尾羽沢功氏は、製造業向け計画、小売業向け計画、ストアオペレーション、カテゴリマネジメントに加え、エンドユーザーに商品を的確に届け、かつ会社側も利益が上げられるようにする「インテリジェントフルフィルメント」のソリューションを、日本でも今年から本格提供することを明らかにした。尾羽沢氏は「消費行動が読みにくい時代には、オムニチャネルに対応し、生産現場から消費者までのサプライチェーンをシームレスに構築することが重要」と強調した。
【基調講演】
「良品計画の経営改革と海外展開」
2000年代前半、無印良品のV字回復を牽引した同社名誉顧問の松井忠三氏が経営改革について語った。松井氏は不良在庫の処理などを進めるとともに、次の成長に向けた経営変革に着手。それまでシンプルさや機能性を表現していた「わけあって、安い」というコンセプトの内容を時代の変化に合わせて変化させていく。それが、「World MUJI」や「Found MUJI」であり、「これがいいではなく、これでいい」というものだ。併せて、ファッションブランドと提携するなど商品開発の進化にも挑戦する。一方、出店の基準をマーケットや店舗環境などの評価項目に分けて数値化。店舗作業の削減により、直営店の人件費率低減に成功した。「MUJI GRAM」と名付けられた店舗業務マニュアルは現場からの声を反映し定期的に改訂。13冊、2000ページにおよぶ内容によって業務標準化と見える化を推進している。社員研修や店長会議でも多くの時間を「MUJI GRAM」に割くなど、松井氏は「オペレーションマニュアルである『MUJI GRAM』によってPDCAサイクルをまわしている」とも語る。
この業務標準書が全社的な人材育成の基盤となり、「適材適所の配置を実現する人材委員会、専門度を向上させる人材育成委員会によって、働く仲間の生産性と働きがいを向上させている」と松井氏。実際、若手の優秀な社員の海外派遣や年齢にとらわれない抜擢人事なども行っているという。
海外展開も1店舗ごとに黒字化を目指す方向に戦略を転換した。海外での商品開発をレベルアップさせるとともに「MUJI GRAM」の導入でオペレーションの進化を促す。グローバル化を成立させる条件として、松井氏は「ブランド、オペレーション力、ビジネスモデル」のトライアングルを示した。
【ソリューション講演】
「オムニチャネル戦略を支えるエンド・ツー・エンドのサプライチェーン」
JDAソフトウェア・ジャパンの白鳥直樹氏は、始めに、JDAが今年、欧州で実施したクリスマス消費動向調査について説明した。オムニチャネル・リテイリング先進国の英国では、昨年のクリスマスに半分以上の買い物をオンラインで行った消費者が50%以上の高率になっていることを示した。オムニチャネル化に伴い、商品を届けるフルフィルメントの方法も多様化しており、自宅配送以外に、ネットで買って店頭で受け取るクリック&コレクトも増えている。英国では、配送に課題を感じる消費者は微増傾向で、特にクリスマス期は、74%の消費者は、問題を体験した場合には次から店を替えると回答した。白鳥氏は「クリック&コレクトも店で受け取る際の待ち時間が長いなどの課題があり、新しい動きに店側が十分に対応できていないことがうかがえます。特にハイシーズンの配送問題は顧客を失うことにつながりかねないので対策が必要です」と分析。海外と比べて、フルフィルメントの重要性への認識度が低い日本企業には、特に警鐘を鳴らした。
消費ライフサイクルは、ブランド認知、消費者への提案、消費行動、フルフィルメント、アフターサービスという一連の流れで良い体験をすれば、ブランドロイヤルティ向上という循環になる。JDAは、クリック&コレクトなどの新たな消費者動向に対応して、店舗が売り場スペース、人員配分を最適化する「インテリジェントストア」、顧客に商品を迅速に届けるため、受注と同時に倉庫や店舗が動き出すようなオペレーションを行い、効率的な配送計画を立てるのを支援する「インテリジェント・フルフィルメント」のほか、顧客へのリーチの管理、商品計画、顧客インサイトの分析などのソリューションをそろえる。白鳥氏は「コストが上昇しないよう、オムニチャネル化は、人手をかけない効率的な作業によって進めることが必要です」と述べた。
【特別講演】
「百人のキセキ、サッポロビールが取り組むネットとリアルの統合」
サッポロビールの鈴木雄一氏は、ビール愛好家と一緒に、SNSで意見を出し合いながら、新しいビールの開発を行うプロジェクト「百人ビール・ラボ」を中心に、ユーザーとの価値共創の取り組みを紹介した。メーカーの枠を越えた革新的なビジネスモデルの創出を模索する中で、ビール愛好家が集うファンコミュニティを設立。その第1弾企画では、実際の商品開発プロセスをなぞって、コンセプト、味わい、パッケージデザイン、ネーミングを、SNS上でのライブ会議で決めていった。延べ1万2000人が参加した議論の結果、「1人でとことんじっくり味わう」をコンセプトにした「百人のキセキ」を開発した。第2弾では、投票形式でビールのスペックを決めていく総選挙を実施して「百人のキセキ 魅惑の黄金エール」を完成させた。百人ビール・ラボについて、鈴木氏は「ビール市場の間口・奥行きを広げることが当社の成長にもつながるというスタンスで、商品の売り込みを前提としない価値提供の場を目指しました」と、多くの人を集められたことの背景を示し、その成果として「顧客体験価値を創造し、ファンとその価値をシェアするということができたのではないかと考えています」と語った。
インターネットでの取り組みとして、ファンコミュニティとは別に、オムニチャネルを視野に入れたネット直販を「サッポロビール ネットショップ」で行っている。そこでは、通常の流通網の商品とは別に、EC専用商品を投入して、メーカー直販のあり方を研究している。ネット通販では、自社以外のサイトも含めて、ベルギービールタイプの新ジャンルが突出して売れるなど、予想しなかった動向も見られている。鈴木氏は「こうした現象の背景を探れば、ブランド育成に生かせるかもしれません」と期待した。