ビジネスチャンスは佐賀にあり 【実直・謙虚な県民に、日本一地震が少ない佐賀】
実直、謙虚な県民性は
「葉隠」の心にもとづく
「県民性を一言で表すと『葉隠』の心、でしょうか」
こう語るのは2015年1月に初当選を果たした山口祥義知事。生まれは埼玉県ながら、両親ともに佐賀県福富町出身という佐賀のDNAを持つ。
山口知事は東京大学法学部を卒業後に自治省(現・総務省)に入省し、秋田、鳥取、長崎などの地方活性化に手腕を発揮してきた。全国の自治体を見てきた山口知事が語る佐賀の良さが、佐賀鍋島藩士・山本常朝が残した『葉隠』の心なのだという。「武士道といふは、死ぬ事と見つけたり」という一節が有名だが、重要なのはそのような大仰な話ではない。
「わかりやすく言えば、実直、謙虚ということです。『常に己の生死にかかわらず正しい決断をせよ』という代表的な言葉があるんですね。この言葉が表すように、佐賀は藩の時代から賄賂などの文化がないんです。上官や士官の息子だからって特別な待遇を受けたわけではなく、子育てを通じた公平な人材作りを常に大事にしてきました。人間が立派でなければいかんという思想が根付いているんです」
地域に連綿と続く県民性は、企業に勤める従業員の姿勢にもつながる。高卒後就職者の3年以内離職率の全国平均が44%*1であるのに対し、県内の工業高校出身者は同19%*2と半分以下だ。
この県民性を見込まれ、自動車エンジン用軸受けで世界シェア3割を誇る大同メタル工業が工場の建設を決めた。「『九州だから作るのではなく、(優秀な人材が豊富な)佐賀だから作るんだ』と判治誠吾会長に言っていただき、それがいちばんうれしかった」と山口知事は語る。全国にコールセンターを置く会社からも、「業界の離職率は一般的に3割だが、佐賀は約5%と圧倒的に低い」と絶大な信頼を得ている。
「地震が日本一少ない」
という、唯一無二の魅力
「少し揺れただけで、その日の生産分は全部台なしになってしまうんですよ」
半導体用シリコンウェーハ製造・販売の世界トップメーカーであるSUMCOの関係者が、かつて山口知事にそう漏らしたという。ひとたび地震が起きれば、工場でのその日の生産数に多大な影響が出る。工場のラインが止まるだけならまだしも、製造途中のものを廃棄処分にすることもありえる。同社が伊万里市に事業所を置いているのは、佐賀県の地震の少なさに着目したからだった。
日本列島の中でも、九州地方は比較的地震が少ないことで有名だが、その中でも日本一少ない*3のが、実は佐賀県。過去5年間に震度4以上の地震がなく、地震発生回数でも東京都と比較して40分の1程度だ。今後、高い確率で発生すると言われている南海トラフ地震でも、政府の想定では佐賀県の津波被害は九州で唯一ゼロとされている(内閣府「南海トラフ巨大地震モデル検討会」)。