米「アムトラック」で事故が相次ぐ構造的理由 12月以降すでに3件の死亡事故が発生

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アメリカの長距離鉄道旅客輸送を担うアムトラック。右は最高速度240kmの高速列車「アセラ・エキスプレス」(写真:Hama / PIXTA)

米国の長距離特急列車「アムトラック」(全米鉄道旅客公社)で事故が頻発している。ここ2カ月足らずの間に、すでに3件の死亡事故が発生している。

【2017年】
12月18日 ……… 西海岸のワシントン州で速度超過のため脱線(死者3名)
【2018年】
1月31日   ……… 東海岸のヴァージニア州の踏切でトラックと衝突(死者1名)
2月4日  ………… サウスカロライナ州で停車中の貨物機関車に衝突(死者2名)

さらに、2月6日には時速200kmでメリーランド州内を高速運転中のアムトラック「アセラ・エキスプレス」で、連結器が外れるという事故が発生した。この事故では死傷者は出なかったものの、一歩間違えば惨事となっていたとして全国ニュースで報じられている。

年間死者数が170人に

アムトラックに関しては、年間の事故による死者数が2008年には119人であったのが、2017年には170人と増加しており、その安全対策の不備が改めて指摘されている。

極めて深刻な事態だが、背景には次のような構造的な問題がある。

1つは同じ線路を複数の会社が共用しているという問題だ。アメリカの幹線鉄道では、長距離特急のアムトラックと近距離の郊外列車運行会社、そして鉄道貨物を扱う会社が同じ線路を共用するのが当たり前になっている。

2月4日のサウスカロライナで起きた事故の場合は、この問題が背景にある。事故区間の線路の管理はCSX社という大手鉄道貨物会社が行っていた。ところがこの区間では電気式の信号システムが改良工事中であったので、分岐器(ポイント)の操作はCSX側が手動で行っていたと発表されている。

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