ベッキーの釈明はいったい何がマズかったか 最大の失敗は「不倫疑惑」そのものではない

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もし多方面の人々に謝罪しなければいけないとしても、「真っ先に謝らなければいけないのは」などの枕詞をつけて、重要度や優先順位を分かりやすくしておくべきでした。たったそれだけのことをしていれば、ここまで女性たちの反感を招くことはなかったかもしれません。

「自分の意志で好きなことを言えない」という立場は、企業の管理職も同じ。自分の意に反したコメントを強要されることも多く、その方向性が正しければまだいいのですが、間違えてしまったときは本人も会社も凄まじいバッシングを免れません。古い体質の会社ほど、目先のお金や保身に走る余り、誤った方向性のコメントを発しがちで、大事に至るケースもよく見られます。

あなたも“二次災害”に注意!

ベッキーさんとは通算4時間くらい1対1でお話したことがありますが、彼女は些細なことでも「ありがとう」の感謝と「ごめんなさい」の謝罪を何度も言うなど、気をつかいつつも率直に話してくれる人でした。だからこそ、ベッキーさんがあれほど焦燥した表情をしていたのは、「自分の犯した罪の大きさ」だけでなく、諸事情によって「正直に話して謝ることすら許されないから」のような気がしてなりません。

もちろん真相は分からないし、不倫をしていたのなら責められてしかるべきですが、“タレント・ベッキー”としてそれ以上にマズかったのは、多くの人々に「ウソをついた」という悪印象を持たれてしまったこと。これまで築いてきた「元気」「正直」「優等生」などのイメージが通用しにくくなっただけに、今後の芸能活動に暗雲がたちこめています。

最後にもう1つ、クライシス・コミュニケーションにおける“二次災害”についても書いておきましょう。今回の騒動をワイドショーの各番組が取り上げる中で、多くのコメンテーターが、「ブログやFAXではなく会見を開いて頑張った」「ベッキーも普通の女の子だった」などとフォローしていました。これは「ベッキーの人柄を知っているからフォローしてあげたい」という温情かもしれませんが、クライシス・コミュニケーションにおけるコメントとしては間違っています。

問題はベッキーさんの人柄ではなく、ベッキーさんの採った行動。もし行動が悪かったのなら、それをフォローした人も、当事者のイメージダウンに巻き込まれてしまいかねません。みなさんが公私において責任のある立場にいるのなら、公の場はもちろんSNSなどにも、温情に任せたコメントを発信しないことがリスク管理になるのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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