プロ野球は観客動員数をごまかしているのか 公表人数と肌感覚で大きな差が出るカラクリ

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有料販売枚数は、年間シートも含めて球団が販売した枚数に、プレイガイドなどに販売委託した分のうち実際に売れた枚数を合計して算出する。これに、無料配布分の着券枚数を加えるわけだが、無料配布分は入場券への引き替え券の形にしておき、ゲーム当日にチケット販売窓口で交換させれば発券データに反映できる。

この方法が実来場者数とニアリーイコールになると考えられたのは、チケットを買ったのに来ない客はごくわずかで、年間シート保有者の未来場分も誤差の範囲だろうという前提があったからだ。

年間シートはセカンダリーマーケットが成立

動員数水増しの原因として、よくやり玉に上がるのは年間シートの来場者数である。年間シート契約者が実際に来場するのは、1シーズン70ゲームのうち1~2割程度で、それ以外の日は空いたままになる、その空いた分が水増し分である、というロジックなのだが、実際には空いたままになることは少ない。

年間シート契約者は、開催日分の枚数を綴ったチケットの束から、該当日分を切り取って使う。営利目的の転売は禁じているが、企業が接待に使ったり個人が家族や知人にプレゼントすることを前提にしているので、譲渡自体は禁止していない。招待される側は、年間シート契約者から該当日のチケットの現物をもらって来場する。

年間シート最大のネックは観戦しないゲームが一定数出ることにあり、12球団中5球団は、観戦しない日のチケットを何らかの形で引き取る制度を導入している。事前に引き取る制度を導入しているのがロッテと西武、ソフトバンク。ロッテと西武は別の日の内野指定席との交換、ソフトバンクはヤフオクドームの商品券との交換になる。この3チームに関しては、引き取ったチケットが再販売されることで席は埋まる。

ちなみに、未利用のまま該当日が過ぎてしまったチケットを、後日ほかのチケットと引き替える制度を導入しているのが楽天、横浜、ソフトバンクだ。巨人、阪神は人気球団であるうえに、球団が引き取る制度がないためか、年間シートチケットがチケットショプに大量に転売されている。

「甲子園に来慣れている阪神ファンは、梅田周辺のチケットショップで物色してから阪神電車に乗る」(関西のチケットショップ)そうだし、東京ドーム周辺のチケットショップには、年間料金をゲーム数で割った単価とはケタ違いの高値で、巨人の年間シートチケットが並べられている。

年間シートのチケットをショップで購入する際の最大のリスクは、雨天による中止だ。一般のチケットと異なり、雨天で中止になったゲームの分は払い戻しをしないで、振り替え試合のチケットを後日、別途発行する形をとる。このため、かつてはチケットショップでの年間シート購入には、最悪の場合、買ったチケットが無駄になる覚悟が必要だった。

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