27年開業なるか?リニアの行く手阻む最難関 全長25㎞の「南アルプストンネル」が着工

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そんな難題が予想されるとはいえ、JR東海や建設会社は予定通りの工期を見込んでいる。柘植社長は「ボスポラスを掘った最先端の企業が工事をされるので、我々は全幅の信頼を置いている」と語った。「ボスポラス」とはアジアとヨーロッパを隔てる海峡として知られるトルコのボスポラス海峡のこと。2013年10月に開通したその海底トンネルを建設したのは、南アルプストンネル山梨工区のJVの一員である大成建設だ。

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実験線のトンネルを抜けて疾走するリニア。品川〜名古屋間はトンネル区間がほとんどを占める(撮影:尾形文繋)

安全祈願の式典に出席した同社の村田誉之社長も、南アルプストンネルについて「難しさはいくつかある」として地質の複雑さや湧水の多さなどを挙げた上で「技術を進化させる大きな夢のプロジェクト。技術を結集し、一つ一つやっていきたい」と答えた。

慢性的な人手不足の中で工期についても「これは国家的プロジェクト。調達含めてしっかりとできることになっている。ご心配ございません」と述べた。

各地で動き出す建設工事

南アルプストンネル・山梨工区での工事はまず非常口から斜坑を掘り進み、本線トンネルの建設は「NATM(ナトム)」と呼ばれる山岳トンネル工法で行われる。発破によって掘削を進め、アーチ形の支保工によって支えながらコンクリートを吹き付け、さらにロックボルトと呼ばれる棒を打ち込んで全体を安定させるという工法だ。

将来リニアが最高時速500kmで走り抜ける本線トンネルはカマボコ型で、幅は約13m。本線トンネルの掘削は「順調に進めば2016年秋から」(JR東海)始まる予定だ。

3つの工区に分かれた南アルプストンネルの他の工区は、長さ約8.4kmの長野工区の施工者が2015年度内には決まる見込みだ。このほか「駅の下にもうひとつ駅を造る難工事」(柘植社長)である品川・名古屋の両ターミナルについても、2015年秋には品川駅北工区・南工区の施工者が決定し、リニア中央新幹線の実現に向けた工事は各地で動き出している。

しかし、トンネル区間が大半を占めることから大量に発生する残土の処理や工事に伴う環境保全、さらには用地取得などまだまだ数多くの課題が山積している。建設が本格化していく2016年は、リニアをめぐる動きがこれまで以上に注目される年となりそうだ。
 

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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