岐路に立つドコモ、1位なのは「契約数」だけ 起死回生の道はあるか
NTTドコモにはもう期待できない……。そんな空気が市場を支配している。
2000年2月には42兆円あった時価総額。当時は「iモード」人気でドコモは独り勝ち状態。営業利益も1兆円を超えてわが世の春を謳歌していた。
しかし、今や時価総額は5兆円台まで暴落。日経平均株価はリーマンショック直後の水準から持ち直しているものの、ドコモの株価は底ばい状態のまま浮上の兆しが見えてこない。市場の評価を示すPBR(株価純資産倍率)は解散価値の1倍をわずかに上回る1・1倍。現状の純資産以上の価値をほとんど認められていない状況だ。
ドコモの業績自体は高水準で比較的安定している。約6000万の契約数を誇り、12年3月期の営業利益は8744億円。過去最高だった04年3月期の1兆1029億円には及ばないものの、直近実績ベースで上場企業2位(金融機関除く)。売上高営業利益率20%以上の高収益だ。
にもかかわらず株式市場の評価が低いのは、業界全体が契約数を増やす中で、ドコモの伸びがほとんど止まっているからだ。特に昨年10月にKDDI(au)がアイフォーンを発売して以降、MNP(番号持ち運び制度)を利用したauやソフトバンクへの転出が加速。多い月では10万件超を奪われる草刈り場となった。
競争環境は激化の一途をたどる。今年3月にはKDDIがスマホと固定回線のセット割引を開始するなど、ドコモが法規制上踏み込むことのできないサービスを導入。8月にはソフトバンクが、すでにドコモと手を組んでいるエイベックス・グループと提携。動画や音楽配信サービスを本格展開することを決めた。独自サービスが売りのドコモの牙城はさらに切り崩されようとしている。