岐路に立つドコモ、1位なのは「契約数」だけ 起死回生の道はあるか

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巨額投資失敗の過去 M&Aへの本気度は?

ただ、ドコモにM&Aで真贋を見極める力がどこまであるかいぶかしむ声もある。かつて「大失敗」をしているためだ。

ドコモは00年代前半にも巨額投資を行っている。「iモード」を世界に売り込むために、自社開発の通信方式の世界標準化を狙い米大手通信事業者のAT&Tワイヤレスなどに総額2兆円を投じたのだ。しかし、ドコモ方式の標準化は失敗。世界では複数の通信方式が並行して使われることになり、「iモード」はガラパゴス化の象徴に成り下がった。さらに、ITバブルの崩壊で1兆円超の損失を計上することとなった。

しかし、これだけの損失を出しながら経営陣の責任などは大きく問われなかった。海外事業の担当だった辻村清行氏は山田社長時代に副社長に抜擢され、今年6月に任期を終えると、保守子会社の社長のポストに天下り、というお決まりのコースをたどっている。「普通の企業であれば何らかの責任を取らされるほどの失敗。しかし、これだけの損失を出しても副社長に就けたのだから、現在の担当者が本気で取り組むとは思えない」(前出のアナリスト)。

通信障害への本格的な取り組みも急務だ。前出の阿佐見氏も「付加価値サービスを訴求するにはネットワークがぴかぴかであることが大前提」と語るが、最近は大規模障害が頻発。1月には総務省から行政指導を受けた。平時でもソフトウエアをアップデートするとメールボックスから全メールが消失してしまうトラブルが月100件程度起きるなど、スマホのメールサービスで深刻な不具合が多発している。

このままでは、三年連続で1位を取った「顧客満足度1位」の座も危ぶまれる。「1位なのは契約数だけ」という事態も避けられない。業界の勢力図がじりじりと塗り替わる昨今、ドコモの地位は安泰ではない。

(麻田真衣 =週刊東洋経済2012年9月1日号)

 

 

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