北京市民が東京都民並みに長生きできる理由 PM2.5に立ち向かう現代中国人の養生事情
2014年における北京市民の平均寿命は男性79.73歳、女性83.96歳(北京市衛生計画生育委員会「北京健康白書」)。一方、2010年における東京都民の平均寿命は男性79.82歳、女性86.39歳だ(厚生労働省「都道府県別生命表」)。女性では2.43歳差があるものの、男性については、ほとんど差はない。PM2.5、水や食品の汚染など、生活環境に恵まれてるとはいえない北京市民だが、なぜ東京都民並みに長生きできるのだろうか。
その一つの理由として考えられているのが、中国に古くからある「養生思想」である。日本にも貝原益軒の「養生訓」に代表される養生思想はあったが、明治以降の西欧医学の導入とともに、科学的でなく、怪しげなものとして退けられてきた。中国ではこの養生思想が相伝され、生活習慣となり、中国人の健康維持に役立っているのではないかと考えられる。
中国人に、次のようなイメージを持っていないだろうか。
「冷たい水を飲まない」「いつも厚着している」「女性はあまり化粧をしていない」「グルメで料理にこだわりがある」「足裏マッサージ、鍼灸、抜罐(カッピング:カップにアルコール類を入れて燃やして皮膚に当てるる療法)、気功、かっさ(小さな板などを使って背中等をこすって皮膚を充血させ、体の「毒」を排出させる療法)など民間療法を取り入れている」ーーこれらはみな、養生思想に基づく生活習慣と健康法である。
病院は本当に死にそうな時に行く
中国人が養生思想に頼る理由の背景には、西洋医学や病院に対する不信感や抵抗感がある。日本では、病気に罹ったら病院に行くのが普通だろう。中国の場合、まず漢方薬や自己治癒力で治そうとする。
たとえば、身体が冷えて風邪(夏バテは別の治療法がある)をひいた場合。風邪の初期に葛根湯を飲み、生姜を入れた足湯につかり、身体を温める。高熱でない限りは西洋薬を飲まず、生姜のスープをたくさん飲む。食事はおかゆや薬膳チキンスープ。後期になったら、咳に効く漢方薬(中国では「中薬」と呼ぶ)と同時に、肺に優しいと言われる白クラゲと梨のスープを飲む。咳がなかなか止まらず、炎症が起こった場合は、抗生物質を摂取するのではなく、塩を入れた白湯でうがいをして消炎する。
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