農業用貯水池が引き起こす「内陸津波」の恐怖

中国の人災土砂崩れは他人事ではない

深センの土砂崩れの現場では行方不明者の捜索が行われている(12月23日、写真: REUTERS/Kim Kyung-Hoon)

12月20日に中国広東省で起きた大規模な土砂崩れは約70人を生き埋めにする大惨事になった。これは深センの都市開発に伴って積み上がった残土を適切に管理していなかったことから生じた「人災」といえるだろう。

このニュースを聞いて「日本ではありえない。中国だから起きたこと」と考える読者が多いのではないだろうか。しかし、日本にも適切な管理がなされていないために大災害が起きかねない問題は多い。そのうちのひとつが、意外に知られていない「内陸津波」の問題だ。

満水の貯水池が決壊

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、1万9225名が亡くなり、行方不明者は2614名にものぼる。死因の90%以上が「溺死」とされ、津波の被害がいかに甚大だったかがまざまざとわかる。

このとき太平洋岸を襲った津波は、いうまでもなく海からの津波だ。しかし、津波は必ずしも海からのみ来るとは限らない。実はこの時、1歳から89歳までの8名もの命が、農業用の貯水池(ため池)が決壊したために発生した内陸津波で失われている。

決壊したのは福島県須賀川市江花にある「藤沼貯水池」。震源地から200km以上離れていたにも関わらず、震度6強の強い揺れに襲われた。その直後、農繁期に備えてほぼ満水状態だった藤沼貯水池が決壊し、150万トンもの水が一気に流出した。

周辺に大きな河川がないために、農業用水を確保する目的で作られたため池は、全国で約20万カ所存在する。最もため池の数が多い都道府県は4万3245カ所の兵庫県、これに次ぐのが広島県で1万9609カ所、3位が香川県の1万4619カ所というように、年間降水量の少ない瀬戸内地方に多いのが特徴だ。

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