増加する「爆買いしない」中国人たちの本音 彼らは何を思い、どこへ向かうのか?
「正直言いましてね、私、あまり中国人に会いたくないんですよ。だって、わざわざこんなところに来てまで……ねぇ……」
「えっ? 中国人に会いたくないって? そ、そうなんですか……」
これはある富裕層の中国人と私の会話だ。中国人の顔を見たくないといっているのは、当の中国人である。しかし、この話には「なるほど」と思わせられる、ちょっと切ないワケがある。
ある中国人、富裕層男性の本音
語り手は40代後半の富裕層の男性。上海の大手企業で管理職に就いている。年収は1000万円以上あり、妻と1人娘がいる。仕事はハードで毎晩遅くまで働いているが、年に何回か休暇を取り、家族で海外旅行に出かけることを密かな楽しみにしている。海外旅行のときだけは、数人の部下からの緊急メールを除き、仕事はシャットアウト。海外の中でもとくに好きな日本で、ゆったりのんびり過ごすことにしている。
行き先はさまざまだ。以前は北海道が好きで、札幌からそれほど遠くない都市にある隠れ家的な高級温泉旅館をよく定宿にしていた。たまたま友人に紹介された旅館で気に入ったのだが、 “中国人”は自分たち以外、一組もいない。日本語はできず、英語で会話しているが、その旅館は外国人もけっこう多いため、まったく問題ないという。京都や奈良も大好きで、大好きなお寺巡りや料亭での料理を楽しんでいる。行動をともにするのは家族だけ。英会話OKのタクシーをチャーターして、自由できままな旅行を楽しんでいる。
日本語以外の言語で話している、ということを除き、彼らの外見だけで中国人と判断することはちょっと難しい。おしゃれで、洗練されていて、知的なニューファミリーといった雰囲気を醸し出しているからだ。そう説明すると、語弊があるかもしれないが、いわゆる「爆買い中国人のイメージ」とは一線を画しているのである。
今夏、私は『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』の取材をしていて、彼らのような知的な仕事に就く富裕層が続々と来日していることを知った。彼らの目的は「癒し」、「学習」そして「日本でしかできない体験」だ。
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