日本の「夫婦別姓禁止」は、いつまで続くのか 最高裁の判示に打たれた布石を読み解く

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最後に、「通称使用による不利益の緩和の有無」。多数意見は、婚姻前の氏の通称使用が広まることで不利益は緩和されると判断している。この判示は報道も大きくされた。一方、少数意見は、通称は便宜的なもので、公的な文書には使用できない場合があるうえ、戸籍名と異なるなどの問題点があると指摘している。

「多数意見のいうように、通称の使用が広まれば、夫婦同氏による不利益は緩和されるが、そうなれば通称の使用を法制度化すべきという流れになる。通称を法制度化することは、結局、夫婦別氏を認めるに等しい。多数意見の指摘は、自分で自分の首を絞めているようなものだ」(同)

こうして見てみると、やはり少数意見の方が説得的であると思える。しかし、法律家の間では、最高裁は憲法違反ではないと判断する可能性が高いと予想されていた。

あくまでルールを決める場は国会

物事を決定するときは、原則として、国会による民主的手続による必要がある。裁判所がなんでも「憲法違反」と判断してしまえば、それは国民主権ではなく、裁判官による支配となってしまうだろう。また、夫婦別氏を認めないことが憲法違反であるとしても、具体的にどのような制度にすればよいのかについて、裁判所は判断する立場にない。今回のようなケースの場合、国会による議論を通した、民主的手続での改正を促すことが筋だと考えられていたのだ。

しかし、説得力のある少数意見は、未来の多数意見につながる道筋の第一歩となる。非嫡出子の法定相続分差別についても、「憲法違反」とする意見は平成7年には最高裁の少数意見であったが、平成25年には多数意見となった。今回の判決の少数意見が、選択的夫婦別氏導入に向けた強力な後押しになることは間違いない。

さらに、今回の判決で注目すべきポイントがもう1つある。

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