国内販売で苦しむ三菱自、待望の新型車「ミラージュ」に込めた狙い

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ミラージュの武器は低燃費だ。車体の軽量化や空気抵抗の軽減などによって、燃費性能は27.2km/リットルを達成した。普通乗用車カテゴリのガソリン車でありながら、国内市場の主役であるハイブリッド車(HV)や軽自動車の最新モデルと比べても遜色はない。たとえば、ホンダの主力車種「フィットハイブリッド」の燃費は26.4km/リットルである。そして、もう一つのウリが低価格。日本では最廉価版で99.8万円と100万円を切る。

だが、益子社長の力強い宣言とは裏腹に、実は三菱自にとってミラージュは、国内市場でのヒットを至上命題とはしていない。

三菱自は新興国強化を柱に据えた中期経営計画を11年1月に発表。その目標達成のカギを握る世界戦略車がミラージュだ。全量をタイで生産。日本には「逆輸入」される車である。すでにタイで先行して今年3月に発売。7月末時点の受注台数は累計3.3万台を超える。今後は東南アジア諸国やオーストラリア、欧州など世界150カ国程度に販売地域を広げる。日本市場はそのうちの一つに過ぎない。

生産地をタイに選んだ狙いは、低価格を実現するためだ。人件費の安さに加え、一定以上の燃費基準を達成した自動車メーカーには、8年間法人税が免除される政策もある。そして低価格を追求したワケは、今後の成長が見込める新興国での競争力を確保するためである。

日本の新車市場は世界でも指折りの激戦区だ。目の肥えた日本の消費者に受け入れられるには、高い品質と性能が求められる。ところが、それを基準に新車を開発すると、「まずはとにかく安い車でもいいから欲しい」新興国の需要になじまない場合がある。

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