山手線「新型車両」は、なぜいま必要だったか 車両製造の都合など4つの理由から推察!

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したがって、いまごろになってE235系を投入するくらいならば、E231系500番台が寿命を迎えるであろう2020年代前半まで待ったほうがよさそうだ。新鮮味はないものの、利用者から見て別段不具合は感じられない。まさか「山手線はつつましやか」という声に配慮したのであろうか。

E235系が2015年のいま山手線に投入される理由をJR東日本に聞いても、当然のことながら引用した「R&m」誌のような答えしか返ってこない。そこで筆者は次の4つの理由を推察してみた。

今つくるしか時期がなかった?

1)総合車両製作所の都合

E235系に限らず、首都圏を走るJR東日本の一般形、通勤形と呼ばれる電車の大多数は、同社の子会社である総合車両製作所の新津事業所(2014年3月31日まではJR東日本新津車両製作所)でつくられる。2010年にE235系へと完全に置き換えるためには少なくとも2008年ごろから準備をしなければならない。当時、同事業所は京浜東北線向けのE233系、それが終われば京葉線向けの同じくE233系を製造しており、年間に250両の製造能力をフル稼働させて両路線へと電車を送り出していた。

新津事業所はその後も横浜線向け、南武線向けとE233系を製造し、なかなかE235系の番にはならない。やっと順番が回ってきたと思ったら、時はすでに2015年で山手線にとっては何とも中途半端な時期となってしまった。

だからといってE235系の製造を遅らせることはできない。ほかにつくる電車がなければ同事業所は暇を持て余してしまうし、それに2018年ごろからつくろうかと高をくくっていると、今度は横須賀・総武快速用などの電車を置き換えるための電車の製造で忙しくなってしまう。要するにいまつくるほかないのである。

2)人手不足対策

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デジタルサイネージの導入は広告を交換する人手の不足対策だった( 撮影:風間仁一郎)

登場当初のE235系の車内で最も目立ったのは、中吊りと側天井の紙広告を廃止した点だ。E231系500番台に設置されている両引戸上の17インチ車内表示器に加えて21.5インチの車内表示器を設け、先頭車以外の中間車では36面の表示が可能となった。

設置の理由についてはなぜかあまり触れられていない。JR東日本によれば、毎週のように紙広告を変える作業担当者がこのところの人手不足で確保できないので、その対策なのだという。山手線のように、だれもが広告を出したいと考えるような路線で紙広告が満足に掲示できなくなっては一大事だ。JR東日本としては広告主のためにと最善を尽くしたのであろう。

結局のところ、広告主は従来の紙広告を支持したため、車内表示器だけに頼る広告掲示方式は見直しとなった。紙のほうが見やすいという理由のほか、21.5インチの車内表示器の位置があまりよいとは言えない点も挙げられる。この車内表示器はなぜか荷棚のすぐ上にあり、荷棚に荷物を置かれたら表示が見えなくなるからだ。

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