東大を抜いた「学費・家賃タダ」の大学の正体 海外に出て気づく「日本の大学の未来は暗い」

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ただ大学を研究ではなく、教育サービスという視点から見たらどうだろうか。一人の生徒として思う。NUSでの充実した日々を振り返り、「日本の大学に通いたいか?」と問われれば、明らかに「いいえ」だ。同じ時間とおカネを費やすなら、「英語が身につき、アジアへの理解が深まり、世界中に仲間ができるNUSの方が絶対に楽しい」と自信をもっていえる。

NUSは最近になって力をつけてきたせいか、カリキュラムがうまく練られていなかったり、深く考えされるような学びのある授業が少ないと感じたりもしたが、多様な学びは弱点を補うほどの魅力がある。

日本の大学は、もっと危機感を持たなくていいのか

一緒に学んだ生徒には、米国のコロンビア大学を蹴って入学した者、社会科学で世界トップ校であるロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)やオックスフォード大学を卒業した者などもいた。彼らの目には日本の大学など視野に入っていないし、受験さえもしていない。

ちょうど日本では文系廃止など規模の見直しに向けて大学改革が進んでいる。一方、「資金集め」「国際性」「環境」など、アジア1位の大学が生徒の満足度を高めようと対照的に取りくむのは、あまりにも皮肉としか言いようがない。今後もNUSはグローバル規模で優秀な教授と学生を集め、大学のレベルを底上げし、さらに上位のランキングを目指すだろう。

実は冒頭の話には別の条件もあった。

「1カ月以内に合格を受け入れれば、10万円の追加ボーナスをお渡しします」。

露骨におカネで釣る方法にあきれたものの、このあざとい戦略は日本の大学が絶対に持たないしたたかさだろう。

東大の世界ランキング下落の裏側には、日本の大学が考えつかないような、ライバル校による凄まじく地道な努力があるのだ。

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