北陸新幹線「かがやき」が通過する駅の模索 異彩を放つ長野北端「ブナの駅」飯山

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 新幹線は沿線の歴史的なつながりを結び直した。古くから交流のある新潟県上越市までは車で1時間ほどの距離だが、飯山駅と上越妙高駅は「はくたか」で1駅、わずか10分の近さになった。上越市側では、飯山市側との連携を強めたいという声も聞かれた。

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長野駅に停車する北陸新幹線。飯山駅からは「はくたか」で11分だ(撮影:尾形文繋)

一方、長野駅までは「はくたか」で11分、飯山線経由でも50分前後だ。

飯山駅を長野駅と連携させ、例えば往路は飯山線、帰路は新幹線を使う想定で、長野市と飯山市の人々が飯山駅を舞台に「雪国の暮らしと健康、幸福」といったテーマで語り、交流し合う環境がつくれれば、よく見かける観光イベントよりも大きな意義と効果をもたらすだろう。

さらには、雪深い田園地域ならではの視点を活かし、「人口減少に立ち向かう地域拠点としての駅」といった活用法は考えられないか……。そんな思いがわいて湧いてきた。このような着想は、駅をどんどん飛ばして北陸路を駆け抜ける「かがやき」の車窓からは得られないに違いない。

「かがやき」が停まらない駅の悩み

この秋の北陸調査では、開業以降のさまざまな変化を感じ取ることができた。「独り勝ち」と言われた金沢市では、押し寄せる観光客が地元の暮らしを圧迫しているとの情報も耳にした。全国規模の会議や学術大会が集中したため、ホテル代が高騰したり、宿泊施設を確保できなかった旅客が隣県・富山の高岡市や富山市への宿泊を余儀なくされたりといった状況も見聞した。

他方、「かがやき」が停車しない駅を抱え、地元自治体の模索が続く現場をいくつか見ることもできた。

上越妙高駅の郊外立地で都市機能分散に悩む上越市では10月末、日本都市学会が「新幹線を活かしたまちづくり」をテーマにシンポジウムを開催した。筆者はパネリストを務めるとともに、市内の城下町・越後高田などを視察する機会に恵まれた。昭和以前の香り濃い街並みや高田城、上杉謙信ゆかりの春日山城、長く越後の中心地だった直江津などの空気を、新幹線駅とつなげられないか……と、もどかしさも募った。

上越市は、整備新幹線の開業自治体では例のない、地元全域の住民を対象にしたアンケートを実施しており、その結果とデータの活用が今後待たれる。

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