透けて見える野田首相の「大仕掛け」

透けて見える野田首相の「大仕掛け」

塩田潮

 4日の内閣改造は、初の非議員の防衛相起用が物議を醸しているが、それ以外は代わり映えがしない人選で、問題閣僚の交代による綻びの修復という後ろ向きの改造である。

 だが、小沢元民主党代表との2度の会談、それに続く改造と、就任から9カ月で野田首相が大きな動きを見せたことで、図らずも政権担当の真意と心算が少しずつ見えてきた。

 首相は就任時から「増税」「決まらない政治との決別」を唱え、今国会では「消費税増税法案成立に政治生命を」と明言するが、政権運営では「民主党の結束」と「自民党の同調」を求める二股膏薬路線を続け、愚図で無策で消極的と評判が悪かった。だが、21日の会期末を前にして、やっと動き出した。それによって見えてきた真意と心算とは何か。

 目標はもちろん増税法案成立で、最後は「民主党の結束」よりも「自民党の同調」を優先させるだろう。

 だが、ひょっとすると、増税実現や財政再建にとどまらず、「大仕掛け」を企図しているのかもしれない。キーワードは「決まらない政治との決別」だ。

 現状では「決める政治」の実現には衆参ねじれの克服が不可欠だが、このままでは次の次の参院選の2016年まで解消しない。

 ねじれ克服というと、普通は衆議院で多数を持つ与党が参議院でも多数を確保しようとする。これを逆転の発想で考えると、参議院で多数を確保した勢力が政権を握らない限り、ねじれは克服できないということになる。ここが鍵だ。

 野党時代からねじれを目にしてきた野田首相がこの法則に気づき、その上で「決める政治」を唱えたとすれば、話が違ってくる。まず増税法案をてこに参議院で多数派を結集する。次にその枠組みで衆議院で新しい多数派をつくりだせば、ねじれは克服できる。

 野田首相がそれだけの「大仕掛け」の知恵と戦略を持ち合わせているかどうかははっきりしない。仮に「大仕掛け」が成功しても、自分が首相を続けられる保障はない。最後は国民の判断が決め手となるから、支持されない可能性も大きい。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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