野田首相は採決の前に総選挙の腹を括れるか

野田首相は採決の前に総選挙の腹を括れるか

塩田潮

 21日の国会会期末まで残り10日となった。野田首相は「与野党協議・修正合意、法案採決」というシナリオを描く。

 11日、国会で「法案不成立なら解散を」と決意を聞かれ、「決断の時期は迫っている。政治生命を懸けている。それ以上は言わなくてもおわかりいただけるのでは」と述べた。その真意について、「『ぶれずに一直線』の首相は自爆覚悟で独走も」という見方と、「与野党の反対派と解散恐怖組への脅し。ぎりぎりの段階で無理と思えば、国会大幅延長などの柔軟路線に転換するのでは」という解説の両方がある。

 首相の内意が、かつての「小泉流解散・総選挙」で柔軟対応拒否の一直線路線なら、来週の衆議院解散、7月総選挙という激動もあり得る。

 だが、いま総選挙をやれば、民主党は過半数割れどころか、第一党にとどまるのも無理だろう。首相はそれを承知で、民主党よりも国家財政の立て直しが重要と考えているのかもしれない。世論調査の数字とは違って、実際は国民の多数は消費増税不可避と判断していて、総選挙でも与野党の増税勢力が多数を握り、増税が国民の支持を得た形になると思い込んでいる可能性もある。

 ここまで野田首相は、「まず法案成立・その後に総選挙・選挙後に増税実施」という筋書きで進んできた。おそらく1994年から97年にかけての村山内閣と橋本内閣による3%から5%への税率引き上げという過去唯一の成功例を手本に、と考えたのだろう。

 だが、先にむりやり国会で法案を成立させ、既成事実をつくった上でその後に民意を問うという進め方は本来、筋違いで、民主主義に反する姑息な戦法である。もし野田首相が、ここで解散・総選挙も、と本気になっているのであれば、政治的な計算は何であれ、むしろその選択は評価できる。もともと国民との約束、民意の支持なしには、どんな方針も政策も実現しない。

 採決の前に総選挙で民意の支持を得て、その上で法案成立を目指すのが王道の政治である。「法案不成立」「採決不能」「政治責任追及」による追い込まれ解散でなく、進んで先に民意を問うべきだが、首相は腹をくくることができるかどうか。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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